コラム

投票直前の今、最も感染リスクが高いのはトランプ派集会

2020年10月13日(火)19時30分

選挙戦終盤に向けてトランプはコア支持者を固めることに躍起になっている Jonathan Ernst-REUTERS

<現在、共和党支持層が感染リスクについて「最も気にしていない」集団であることは間違いない>

アメリカにおけるコロナ禍ですが、ここへ来て数字としてはやや落ち着いてきました。私の住んでいる東北部は、4~5月に厳しい状態がありましたが、その後は鎮静化しています。続いて南部と中西部で感染拡大があり、10月に入った時点では大平原の超保守ゾーンが厳しい状態ですが、少なくとも北東部の場合は第二波という感じにはなっていません。

けれども生活ということで言えば、まだまだリスクが残っている感覚があります。というのは、他でもありません、アメリカの場合はコロナ対策の問題が、政治的対立になっているからです。簡単に言えば、公共の空間でマスクを着けたり、ソーシャルディスタンスを確保したりする人は民主党支持で、反対に共和党支持者の中では感染対策に鈍感あるいは無頓着というように、政治的な姿勢がコロナ対策の姿勢になっているのです。

もちろん、政治とは別のところで鈍感な人、敏感な人、感染症対策の基礎知識のある人、ない人はアメリカでもいます。ですが、そのバラツキに政治的な対立構図が重なってしまう、そこに現在のアメリカの問題があります。

例えば、公園などですれ違う際に、ソーシャルディスタンスをお互いに意識して、歩道を少し外れて横の距離を確保する、その上でお互いに手を上げたりして挨拶をするような場合があります。こうした場合は、基本的に気持ちがいいものです。礼儀正しいということもありますが、お互いが「相手もちゃんと気をつけている」と信じられる、というのが大きいわけです。

「気にしていない」グループの感染リスク

反対に、マスク無しの自転車ツーリングのグループとか、大声で喋りながらのグループなどがソーシャルディスタンスを無視してすれ違ってくるようですと、こちらが警戒して、多少気まずくても大きく距離を取らねばなりません。つまり、彼らは「気にしていない」グループであり、リスクは高いと考えないといけないからです。

店の選択も同様です。いつも入り口の辺りで愛国歌を流し、BBQ用の巨大な肉塊を安売りしているようなスーパーは、どうしても保守カルチャーの人が集まります。その全てがトランプ主義者ではないだろうし、一人一人は悪い人でもないのでしょう。ですが、感染対策ということでは明らかに「気にしていない」グループになるわけで、そうした店はやはりハイリスクと考えるしかありません。

そう考えると、大統領選直前の現在、最もハイリスクな集団となると、それはトランプ派の集会ということになります。大統領は、担当医のお墨付きが出たとして各州を回る遊説に出ています。つい1週間前には発熱や血中酸素濃度低下を経験したというのに、マスク無しで自分は免疫があるなどと自信満々で遊説を続けています。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル155円台へ上昇、34年ぶり高値を更新=外為市

ビジネス

エアバスに偏らず機材調達、ボーイングとの関係変わら

ビジネス

独IFO業況指数、4月は予想上回り3カ月連続改善 

ワールド

イラン大統領、16年ぶりにスリランカ訪問 「関係強
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 6

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story