コラム

新型コロナ対策、「日本式」の特徴と評価

2020年03月19日(木)14時45分

日本はまだ社会全体のロックダウンには踏み切っていない Kim Kyung Hoon-REUTERS

<PCR検査の対象を絞り込む、社会全体のロックダウンはしない......日本のコロナ対策は特殊事情を反映した極めて特徴的なもの>

新型コロナウイルスの感染は、欧州全土とアメリカで本格的な拡大を続けていますが、ここへ来て、各国別の対応の違いが浮き彫りになってきています。そんな中で、日本の場合は「日本式対応」と言ってもいいような2つの特徴が顕著です。

1つの特徴は、検査数が抑制気味であることです。政府は、PCR検査について保険適用を決めており、必要な検査が受けられるようにするとしていますし、報道によれば、例えば新潟などでは「ドライブスルー検査」が既に始まっています。

ですが、現時点では検査件数は大きくは増えていません。これは、検査来院のために医療現場がパンクする危険を回避するためとか、検査来院がかえって感染拡大になる懸念があるとかいった理由もあると思いますが、最大の理由は2月14日に施行された政令で「無症状の感染者に対しても入院措置ができ、その場合は医療費が公費負担となる」としたことでしょう。

この政令が発効していることで、検査で陽性、イコール公費で入院ということになり、現在でもそのような運用がされています。政府は、重症者の入院を優先するために、軽症者は「自宅療養」となる可能性もPRしていますが、実際に自宅で療養となると、単身者世帯では看護者が必要になるし、一般家庭では住宅事情から寝室や浴室を区分するのは難しいため、まだ踏み切れていません。

欧州よりも「穏健」なアプローチ

このため、重症者は優先するという大前提を崩さずに、この政令を運用し続けるには、リスクの低い無症状者や軽症者への検査は入り口のところで絞る、そんな実務上の運用がされていると思われます。もう少し事態が悪化するか、もしくは好転した場合には運用を改めることは可能であり必要と思いますが、おそらく現時点では直ちには難しいという判断があるのではないでしょうか。

もう1つは、人の集合については企業のオフィスや外食などには規制をかけず、規制は「大規模イベント」と「学校」に限定しているという方法論です。社会全体のロックダウン(閉鎖)に踏み切った中国、イタリア、フランスやアメリカ・サンフランシスコなどと比較すると、穏健なアプローチです。

その前提として、若年層の重症化率は極めて低い一方で、若年層は無症状や軽症のまま無自覚に感染を拡大する可能性があるという認識があります。また、日本は高齢人口という分厚いハイリスク層を抱えているという特徴もあります。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

原油先物9%上昇、イラン新指導者がホルムズ海峡封鎖

ビジネス

米国株式市場=主要3指数が1.5%超下落、原油急騰

ビジネス

NY外為市場=ドル小幅高、原油高背景に安全資産買い

ワールド

米、ホルムズ海峡で国際有志連合と共に船舶護衛へ=財
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車整備は収入増、公認会計士・税理士は収入減
  • 3
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃に支持が広がるのか
  • 4
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 5
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 6
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 7
    2万歩でも疲れない? ディズニー・ユニバで足が痛く…
  • 8
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 10
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story