コラム

南北統一後の朝鮮半島を「反日国家」にさせないために

2017年03月16日(木)16時15分
南北統一後の朝鮮半島を「反日国家」にさせないために

2014年に韓国・インチョンで開催されたアジア大会で掲げられた半島統一を訴える旗 Kim Kyung-Hoon-REUTERS

<朝鮮半島情勢が緊迫するなかで、長期的な視点で日本が警戒しなければならないのは、統一後の朝鮮半島に日本を「仮想敵国」とみなす国家が成立すること>

トランプ政権のティラーソン国務長官が来日し、安倍首相、岸田外相と主として北朝鮮問題について会談するようです。北朝鮮は、安倍=トランプ会談にタイミングを合わせてミサイル発射を行って以降、ミサイル発射を繰り返しています。しかも発射実験は「在日米軍基地を攻撃する任務を負った部隊」が指揮したなどという発言もあり、日米を同時に挑発しているとしか言いようがありません。

その一方で、クアラルンプールにおいて、金正恩・朝鮮労働党委員長の異母兄である金正男氏が殺害される事件も起きています。北朝鮮は、死亡したのは別人だと頑強に否定していますが、正男氏は長年中国が北朝鮮のリーダーの代替候補として「温存」していたと言われた人物ですから、金正恩政権が中国などから「政権交替」を迫られるのを防止、あるいは拒否するメッセージとして、殺害に及んだという見方はできます。

そんな中で、韓国では朴槿恵・前大統領が罷免され、5月に出直しの大統領選が行われることとなりました。後任の大統領は、野党の「共に民主党」系の候補(複数)をはじめとした候補たちの間で争われるわけですが、選挙後に安定した政権ができるのかは不透明な情勢です。これに加えて、米韓による「高高度ミサイル防衛システム(THAAD)」配備に対して中国が強く反発し、中国と韓国の関係は急速に悪化しています。

【参考記事】どうなるポスト朴槿恵の韓国

このような状況下、日本としては「朝鮮半島有事」に備えなければならないわけですが、その際に最も日本として警戒しなくてはならない点が1つあります。それは「日本を仮想敵国とする求心力のもとに統一国家が成立する」という事態です。

私は何も嫌韓感情を煽ろうと言うのではありません。日本との良好な関係が築けるのであれば朝鮮半島が一つの国になるのは良いことだと思います。再統一が民族の悲願だということは、その立場になれば十分に理解できることだからです。

ですが、残念ながら「統一後の国家が日本への敵意を強める」可能性は否定出来ません。というのは、朝鮮半島の統一にはモデルがあるからです。それはドイツに他なりません。1990年のドイツ再統一は平和裏に行われた、それは事実ですが、私が申し上げたいのはその点ではありません。

ドイツの統一時には、東ドイツの経済は破綻に瀕していました。当時の西ドイツのコール首相は、「マルク通貨の一対一交換」「東の住民の国民年金は全額公費による積立」という最大限の優遇措置を行って旧東ドイツの住民を「ドイツ連邦共和国(ブンデスレプブリーク)」に招き入れたのです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)、『アメリカモデルの終焉』(東洋経済新報社)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

ニュース速報

ビジネス

独VW、17年のグル―プ販売台数は4.3%増 トヨ

ビジネス

インタビュー:単独で買収できないM&A案件、難易度

ビジネス

M&A、ビジネスに適合・リターン見込めるなら積極的

ビジネス

トヨタ「自社基準満たす」と最終確認、神鋼製品使った

MAGAZINE

特集:トランプ暴露本 政権崩壊の序章

2018-1・23号(1/16発売)

予想を超えて米政治を揺さぶるトランプ暴露本──。明かされた大統領の「難点」は政権崩壊の引き金となるか

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    子ども13人を劣悪な環境で監禁拷問した両親を逮捕 米カリフォルニアで

  • 2

    ダイアナが泣きついても女王は助けなかった 没後20年で肉声公開へ

  • 3

    「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

  • 4

    インドの女子大生がレイプ防止パンティを開発

  • 5

    ビットコインや株は大暴落か 2018年ブラックスワン…

  • 6

    「英王室はそれでも黒人プリンセスを認めない」

  • 7

    金正恩が背負う金王朝の異常性

  • 8

    金正恩は「いいやつ」「小柄で太めなのにバスケが上…

  • 9

    「休みたいから診断書をください」--現役精神科医「…

  • 10

    「肥だめ」よりひどい?メーガン・マークルに対する…

  • 1

    [動画]クジラがサメの襲撃から人間を救った

  • 2

    ビットコインに未来はない、主犯なき投資詐欺だ

  • 3

    南北会談で油断するな「アメリカは手遅れになる前に北を空爆せよ」

  • 4

    アルコールとがんの関係が明らかに DNAを損傷、二度…

  • 5

    イルカの聴力さえ奪う魚のセックス大騒音

  • 6

    「アルツハイマー病は脳だけに起因する病気ではない…

  • 7

    「筋トレは、がんによる死亡リスクを31%下げる」と…

  • 8

    「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

  • 9

    今の日本で子を持つことは「ぜいたく」なのか?

  • 10

    「無理なハゲ治療」 ついに明かされたトランプヘア…

  • 1

    米国防総省の極秘調査から出てきたUFO映像

  • 2

    朝鮮半島で戦争が起きれば、中国とロシアはアメリカの敵になる

  • 3

    北朝鮮による電磁パルス攻撃の現実味

  • 4

    [動画]クジラがサメの襲撃から人間を救った

  • 5

    決断が日本より早い中国、でも「プチ大躍進」が悲劇…

  • 6

    韓国大統領が中国で受けた、名ばかりの「国賓待遇」

  • 7

    金正恩がアメリカを憎悪するもっともな理由

  • 8

    ビットコインに未来はない、主犯なき投資詐欺だ

  • 9

    ビットコインや株は大暴落か 2018年ブラックスワン…

  • 10

    中国当局、韓国への団体旅行を再び禁止 「禁韓令」…

日本再発見 シーズン2
デジタル/プリントメディア広告セールス部員募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 特別編集

最新版 アルツハイマー入門

絶賛発売中!