コラム

「塾歴社会」の問題は、勉強内容がやさしすぎること

2016年03月08日(火)18時20分

 小学校4年生から高い金をかけて、深夜まで危険を冒して子供を塾に遠距離通学させておきながら、その中で重要な科目である数学において(そもそも小学校までは算数で、中学からは数学などと名称を変えるのが、小学生をバカにしていると思います)、方程式の使用を禁止しているのですから、その「遅れ」の総量は国家的損失だとすら言えるでしょう。

 中高までの教育では、最先端の知識に触れさせていないとか、思考力の訓練、議論の訓練、社会の現場経験などができていないなどの問題は、もちろんあります。英語教育の効果の問題ももちろんあります。ですが、それ以前の問題として、数学と理科の教育内容がやさしすぎるのは大問題だと思います。

 理系は理科3教科必須、数学は統計学と微分方程式、多変数微積分まで含めるべきです。経済社会系の学生も同じく統計学と「数3」を必須にすべきです。小学生であっても、熱心に塾で勉強するのなら、文字式や方程式を解禁したらいいのです。塾歴社会の最大の問題は、カネと労力を吸い取られながら、やっている内容がやさしすぎることです。日本の競争力低下の元凶の一つと言ってもいいでしょう。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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