コラム

右派と左派の融和に向けた2つの提案

2016年02月12日(金)19時00分

 ですが、いわゆる「右派」の側からは、こうした歴史観のことを「反日」であるとか、「自虐史観」などという言い方がされるわけです。日本のことを悪く言っているから反日であり、日本人でありながら日本のことを悪く言っているから自虐だというのですが、これも妙な話です。

 戦前に関する「否定」を言っている側は、日本が嫌いなのではなく、日本こそ世界に冠たる倫理的優越を実現したいというバリバリのナショナリズムから言っているのです。それにも関わらず、それを反日とか自虐という形容をするというのは、その形容をしている方が滑稽に見えてしまうように思います。これは80%ぐらい減らした方がお互いのためではないかと思います。結果的に、左右対立を深めてしまうばかりか、それぞれの「行き過ぎ」をお互いに自制することもできなくなってしまうからです。

 左派による「立憲主義を理解していないのは人間ではない」という決め付けと見下し、そして右派による「戦前の否定は反日であり自虐」という形容、この2つを止める、あるいは軽減してみてはどうでしょう? 少しは日本の不毛な左右対立が軽減されるのではないでしょうか?

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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