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ハーバード入試でアジア系は本当に「差別」されているのか?
ハーバード大学の校舎に掲げられる紋章 Jessica Rinaldi-Routers
アジア系の約60の人権団体は、ハーバード大学の入学選考において「アジア系への差別」が見られるとして米国連邦教育省への提訴を行っていましたが、7月7日(火)に教育省は「類似の訴訟が連邦裁判所で進行中」であることを理由に提訴を却下(dismiss)する決定を下しました。
この「連邦裁判所における類似の訴訟」の推移には注目しなくてはなりませんが、少なくとも今回「却下」という判断になった以上、ハーバードをはじめとするアメリカの名門大学の「選考方法」について、政府としては特に問題視はしていないという見方ができます。
この問題ですが、「日系、中国系からインド系、パキスタン系」に至るアジア系アメリカ人が「団結」して権利主張を行ったということには意義があると思います。それぞれの出身国では、お互いにナショナリズムを求心力に利用して相互の世論を離反させることが横行していますが、アメリカのアジア系として「まとまり」を見せたことは評価できるからです。
その一方で、拙著『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』で詳しく述べたように、アメリカの入試制度は「多角的な観点から全人格を評価する」という独特のカルチャー、緻密な評価システムによって成り立っており、それが守られたということは評価して良いと思います。
では、今回の提訴の「根拠」となった "No Longer Separate, Not Yet Equal"(『人種隔離は終わったが、平等は達成されていない』)という本(Thomas J. Espenshade と Alexandria Walton Radford 両氏の共著)にもあったように、SAT(大学進学適性試験)で、「アジア系の合格者平均点は、白人より140点高く、ヒスパニックより270点、アフリカ系より450点高い」という現実はどう理解したら良いのでしょうか?
まずアメリカの大学入試では、SATが全てではないということがあります。SAT以上に高校での内申点が重視されます。またスポーツ活動では、単に部活に参加しているというだけではなく、「高校の代表チームのレギュラーだったか?」とか「最高学年でも現役で、しかもリーダーシップの地位にあるか?」ということが問われます。またボランティア活動の履歴、音楽や美術などアート活動の履歴も重視されます。
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