Picture Power

【写真特集】脅かされる野生動物のパラダイス

PARADISE, INC.

Photographs by Guillaume Bonn

2025年06月07日(土)12時36分
環境破壊

ナイロビ国立公園を横断して建設された鉄道の陸橋のそばで、たたずむシマウマの群れ。アフリカの草原はもはや無限に広がる大地ではない。人間が建設する農園や集落、工場や道路などで分断されたパッチワーク状になってしまった

<中国の経済支援を受けたケニアの鉄道が、野生動物の生息域を分断している──深刻化する野生動物と環境破壊のせめぎあいを20年以上にわたって追った写真集『パラダイス・インク』>

 ケニア東南部の沿岸都市モンバサと首都ナイロビ、さらに内陸部をつなぐ全長約600キロに及ぶ鉄道は、中国の経済支援を受けて建設され、中国紙では「野生動物保護と調和した鉄道」と紹介された。

 しかし首都郊外のナイロビ国立公園には、キリン、ヒョウ、ライオン、サイ、シマウマといった多くの野生動物が生息しており、鉄道を支えるコンクリートの陸橋は、こうした野生動物の生息域を分断し、脅かしている。

 マダガスカル生まれでケニア育ちの写真家ギヨーム・ボンは、ソマリア、ボツワナ、南アフリカなどで、深刻化する野生動物と環境破壊とのせめぎ合いを20年以上にわたって追ってきた。今年4月に発刊された『パラダイス・インク』(エメリア社刊)は、その最新の記録集だ。

 ボンは開発そのものに反対してはいないが、「環境破壊や騒音の影響で、野生動物は生息域を失っている」と語る。経済成長を追求するあまり、各国政府が野生動物と自然環境の保護をなおざりにすることを危惧している。

All photographs are copyright Guillaume Bonn from the book"Paradise Inc." published by Hemeria


ARADISE

著者:Guillaume Bonn
書名:Paradise, Inc.
ISBN: 978-2-490952-53-3
Preface by Ezekiel Ole Katato
Introduction by Jon Lee Anderson
Published by Hemeria
Hardcover | 184 Pages | 21 × 27 cm | €39.00

次ページで写真集から8点の写真を紹介 2へ

 【連載21周年】 Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」
    2025年6月10日号掲載

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンド、銀行株売り 消費財に買い集まる=ゴ

ワールド

訂正-スペインで猛暑による死者1180人、昨年の1

ワールド

米金利1%以下に引き下げるべき、トランプ氏 ほぼ連

ワールド

トランプ氏、通商交渉に前向き姿勢 「 EU当局者が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story