レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい
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フィリピンの首都マニラの、とあるスラム街。ベニヤ板を貼り合わせただけの質素な家が寄り添うように立ち並び、路上は人々の炊事、洗濯、だんらんの場と化している。その光景からは、人間の営みが生み出す音や温度、においまでもが伝わってくるかのようだ。一方で、インフラ開発が進み東南アジア有数の近代都市となったマレーシアの首都クアラルンプールには、無機質な高層マンションがそびえ立つ。生活の痕跡は垣間見えるが、スラム街特有のダイナミズムは感じられない。
ピーター・ビアロブルゼスキの写真集『The Raw and the Cooked(生のものと火を通したもの)』には、東南アジアを中心に16都市の風景が詰まっている。タイトルの由来は、フランスの文化人類学者クロード・レビストロースの著書『神話論理』シリーズの中の同名の一巻。生の食材を完成した一皿へと発展させる過程を、「文明化」の比喩として紹介した名著だ。
ビアロブルゼスキの目にも、新興国で競うように建設される超高層ビルと、発展とは程遠い木造家屋が同居する姿が「調理」の過程に映ったのだろう。さまざまな材料が混在したこれらの都市がどんな一皿に仕上がるのか──そんな問いが聞こえてくるようだ。
Photographs by Peter Bialobrzeski--Laif; "The Raw and the Cooked", Hatje Cantz
【2011年10月12日号掲載】
*先日、本誌Piture Powerにも度々登場する写真家ピーター・ビアロブルゼスキが、権威あるエーリッヒ・ザロモン賞(ドイツ写真家協会がフォトジャーナリストの草分けエーリッヒ・ザロモンの功績を称え1971年に創設した写真賞で、過去の受賞者にはロバート・フランク、セバスチャン・サルガド、ジル・ペレス、マーチン・パーなど)の受賞が発表されました。
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