Picture Power

八方塞がりのイタリア労働者

WORKING CONDITIONS IN ITALY

Photographs by MICHELE BORZONI

八方塞がりのイタリア労働者

WORKING CONDITIONS IN ITALY

Photographs by MICHELE BORZONI

看護師1人の求人枠に1099人の希望者が殺到し、体育館で公開試験が行われた

一向に上向かない景気と巨額の財政赤字を抱え、暗いトンネルからの出口を見つけられないイタリア経済。若年層の失業率が40%近くに達するなか、政治への不満がポピュリズム政治家への支持という形で大きなうねりとなり、経済システムの抜本的な改革は難しくなる一方だ。

フィレンツェ生まれの写真家、ミケーレ・ボルゾーニは苦悩するイタリア社会の映し鏡として、この10年ほど劇的に変化している労働環境に着目。職場や従業員をめぐるさまざまな側面をカメラに収めた。

失業者や安定した仕事を求める人々が公共セクターなどのわずかな求人枠に殺到する一方、企業の倒産は相次ぎ、不要になったオフィス機器などを売る競売が活況を呈している。南部の果樹園に押し寄せるのは、アフリカ出身の不法入国者ら。日雇い労働者として働き、仮設キャンプや工場跡といった過酷な環境での生活を強いられている。

その一方で、新たな雇用の機会も一部ながら生まれている。グローバル企業の物流拠点やコールセンターなどだ。もっとも、厳しい雇用情勢を考えれば、それらの存在は大海の一滴にすぎないかもしれないが。


Photographs by Michele Borzoni-TerraProject

撮影:ミケーレ・ボルゾーニ
1979年、イタリアのフィレンツェ生まれ。大学で地質学を学んだ後、ニューヨークの国際写真センターでドキュメンタリー写真とフォトジャーナリズムを学ぶ。カシミール紛争やパキスタン、エチオピア、トルコ、エジプトのキリスト教徒コミュニティーなどをテーマとした作品を、欧米の有力誌や展覧会で発表している

[2017年2月7日号掲載]



【お知らせ】

『TEN YEARS OF PICTURE POWER 写真の力』

PPbook.jpg本誌に連載中の写真で世界を伝える「Picture Power」が、お陰様で連載10年を迎え1冊の本になりました。厳選した傑作25作品と、10年間に掲載した全482本の記録です。

スタンリー・グリーン/ ゲイリー・ナイト/パオロ・ペレグリン/本城直季/マーカス・ブリースデール/カイ・ウィーデンホッファー/クリス・ホンドロス/新井 卓/ティム・ヘザーリントン/リチャード・モス/岡原功祐/ゲーリー・コロナド/アリクサンドラ・ファツィーナ/ジム・ゴールドバーグ/Q・サカマキ/東川哲也/シャノン・ジェンセン/マーティン・ローマー/ギヨーム・エルボ/ジェローム・ディレイ/アンドルー・テスタ/パオロ・ウッズ/レアケ・ポッセルト/ダイナ・リトブスキー/ガイ・マーチン

新聞、ラジオ、写真誌などでも取り上げていただき、好評発売中です。


MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中