コラム

「まん防」を踊らされる日本国民に問い掛けたいこと

2022年01月25日(火)16時15分

秩序ある行動は日本の美徳とされるが……(上野動物園でパンダを見ようと列を作る人々、1月)KIM KYUNG HOON-REUTERS

<そろそろ専門家や政治家任せでなく、国民としてコロナとどう相対するか、民意を定める必要がある。それとも「マンボウ」を踊り続ける?>

オミクロン株による新型コロナ感染拡大を受け、まん延防止等重点措置が再び首都圏などに適用された。まん延防止と聞いて、昨年使われていた略称「まんぼう」を思い出し、頭の中で歌手ルー・ベガの「Mambo No.5」が流れるのは僕だけだろうか。
それはさておき......。

この措置は、飲食店に営業時間の短縮を要請して、1つのテーブルに5人以上集まるときは陰性証明を必要とする。また、非認証店には酒類提供の停止を求めるといった内容だ。その代わり、お酒を提供するお店に2万5000円以上の、提供しないお店に3万円以上の協力金を用意する。一方、罰則付きの営業時間短縮命令も可能だが、今のところは相変わらずの平和的な「お願いベース」が基本方針だ。昨年の総裁選中に岸田文雄首相は「日本型ロックダウン」を提案したが、そんな話は一切出ていない。

日本は中途半端か、程よいのか

もしかしたら、これが現状の「日本モデル」の最後の戦いになるかもしれないと、僕はみる。「ゼロコロナ」を掲げ厳格な都市封鎖を行う中国と、「ウィズコロナ」を宣言、感染予防を半分あきらめているように見える欧米の間をとったようなやり方だ。「サムコロナ」とでもいえようか。

警察が雀卓をぶっ壊したりしないし、無断で外出する人に暴力を振るったりしない。一方、国民がマスク着用やワクチン接種を拒否したりしないし、人数制限なしの大型スポーツ観戦もしない。中途半端というか、どっちつかずというか、中庸的というか、程よいというか、当てはまる表現はいろいろあるかもしれないが、とにかく「ほどほどそこそこまずまず」を貫いているようだ。

(ちなみに、スポーツ観戦というと、わがアメリカではアメリカンフットボールのダラス・カウボーイズは今シーズン、1試合平均の観客数は9万人を超えている。ホームの南部テキサス州は暖かいからまだわかるけど、中西部ウィスコンシン州のグリーンベイ・パッカーズでも観客数は1試合8万人に迫っている。しかも、1月の平均最高気温がマイナス3度のスタジアムで、上半身裸で熱狂しているファンも多い!コロナがなくても風邪ひくよ!)

日本独自のスタイルでここまで5つの波を抑え込むことができた。もちろん、たくさんの貴い命が失われているし、緊急事態宣言やまん延防止措置で経済的な打撃を食らった個人や企業も多い。日本も無傷ではない。が、他国に比べればダメージが少なく、成功例に見える。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国シャオミ、初のEV販売台数が予想の3─5倍に=

ワールド

イスラエル北部の警報サイレンは誤作動、軍が発表

ワールド

イスファハン州内の核施設に被害なし=イラン国営テレ

ワールド

情報BOX:イランはどこまで核兵器製造に近づいたか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story