コラム

日本を変えるのはKYのチカラだ!

2015年05月20日(水)10時00分

 はじめまして。アメリカ人でありながら日本でお笑い芸人やタレントを生意気にやっている、パックンことパトリック・ハーランです。これからこのコラムで連載を担当することになりました。どうぞ宜しくお願いいたします。

 さ、敬語はここまでにしよう。

 僕が由緒ある報道雑誌のサイトに登場するのに若干違和感を覚える方もいるかもしれないが、大丈夫。編集長がOKを出しているから問題ない!

 でも、ここで僕が何を伝えるのかは、やはり気になると思う。だから、記念すべき1回目のこのコラムでは僕なりにその目的を伝えることにしよう。そのために、まず最近のエピソードを。

 先日、娘の卒園式があった。子どもの笑顔と親の涙と一緒に印象に残ったのは、近所にある小学校から来園した校長先生のステキな挨拶だ。

 まず、先生は卒園児に向かって「今度小学生になるんだね。小学校に来るとき、背負うものと言ったら何?」と尋ねた。子ども達はみんな大きな声で「ランドセル!」と返す。ツカみは抜群。先生は「そう! では、ランドセルの中に入れて持ってくるものは?」と聞くと子どもがまた「教科書!」や「ノート!」、「筆箱!」などと率先して応じる。手を挙げたり挙げなかったり、ちょっとしたカオス状態だったが、とにかく全員フル参加だった。

 それに喜んだ校長先生は続ける。「そう!よくわかったわね。でも、先生はその他にも入れてほしいものがある」とうまく切り替えた。しかし、本編へ転換するところなのに、子どもが「上履き!」「ハンカチ!」「防犯ブザー!」などと、更に答えようとする。

 空気を読まない子どもに、会場では大爆笑が。落ち着いたところで先生は「私がランドセルに毎日入れて持ってきてほしいのは"元気"なんだ」と、やはりいい話に持ち込んだ。その場のみんなが頷いていたし、僕も素晴らしいメッセージだと思った。

 しかしよく考えたら、幼稚園生は元気がある! 新入学生はすぐ手を挙げる。すぐ応える。率先して授業に参加する。でも徐々にその姿勢が見えなくなっていく。小・中・高の教育課程でその元気がだんだんなくなっていくのが典型的なパターン。社会人になってからだと、自然に自己主張できる人は極わずかだ。アイディアがあっても表現できない。意見が伝えられない。奮って参加するどころか、とにかく目立たないようにするのが普通みたい。

 ちなみに、2012年から僕は東京工業大学で非常勤講師を務めている。講義のテーマは、去年までは国際関係とコミュニケーション。今年からはコミュニケーションにだけ絞ることにした。それも学生の希望に応えるため。コミュニケーション能力の低さに自覚があるようなのだ。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

IMF金融安定報告、軟着陸への楽観論に警鐘 三重苦

ビジネス

IMF経済見通し、24年世界成長率3.2% リスク

ビジネス

中独首脳会談、習氏「戦略的観点で関係発展を」 相互

ビジネス

ユーロ圏貿易黒字、2月は前月の2倍に拡大 輸出が回
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 2

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア黒海艦隊「主力不在」の実態

  • 3

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 4

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 5

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 6

    【地図】【戦況解説】ウクライナ防衛の背骨を成し、…

  • 7

    訪中のショルツ独首相が語った「中国車への注文」

  • 8

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    「アイアンドーム」では足りなかった。イスラエルの…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...当局が撮影していた、犬の「尋常ではない」様子

  • 4

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 7

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    猫がニシキヘビに「食べられかけている」悪夢の光景.…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story