最新記事
シリーズ日本再発見

洋食は「和食」なのか? NYに洋食屋をオープンした日本人の挑戦

2017年06月20日(火)11時02分
小暮聡子(ニューヨーク支局)

――「カニクリーム・クロケット」と「エビフライ」は、アメリカ料理にもある?

コロッケの由来はフランス発祥の「クロケット」だと思われるが、スペイン料理だと「クロケッタ」になったりと、ヨーロッパ各国にある料理だ。

カニクリームコロッケに近いアメリカ料理として思い浮かぶのは「クラブケーキ」だが、クリームが入らない。エビフライで言うと、アメリカにも「ポップコーンシュリンプ」など小さなものはあるが、日本のように海老を伸ばして真っすぐな状態で使うというスタイルはあまり見かけない。

japan170620-2.jpg

「バー・モガ」のカニクリームコロッケとエビフライ Satoko Kogure-Newsweek Japan

日本のコロッケとエビフライには粒の荒いパン粉を使うが、ポップコーンシュリンプリンプなどに使われるのは「ブレッド・クランブ」と呼ばれるもの。日本のパン粉より粒が細かくて、市販品はスパイスやシーズニングが入っているものが多い。

だが最近のアメリカでは「パンコ」という言葉が通じるほど日本のパン粉が使われるようになってきた。レストランのメニューに「パンコ・フライド・〇〇(パン粉で揚げた〇〇)」と書いているところもあるほどだ。

日本のパン粉のほうが粒が大きい分、サクサクに仕上がる。うちのお店では乾燥させていない生パン粉を使っていて、より粒が大きいのでサックリというよりザックリという食感になる。

――お店で一番人気のメニューは?

断トツでオムライス。他のメニューの2~3倍は出ている。オムレツ(オムレット)という言葉はフランス語で、ヨーロッパにもアメリカにもある。ただ、チキンライスをオムレツで包んだ「オムライス」は、日本独特のものだと思う。

うちの店では、チキンストック(鶏の出汁)で炊いたご飯をデミグラスソースとケチャップで炒め、それをチキンや玉ねぎと一緒に炒める。チキンライスを型にとって皿に置き、その上に中を半熟に仕上げたオムレツを乗せて、お客さんの前でナイフを入れてチキンライスにかぶさるようにする。最後に、デミグラスソースをかける。

チキンライスの上に半熟オムレツを乗せて切り開くのは伊丹十三監督の映画『タンポポ』(85年)で有名になり、お店ではおそらく「日本橋たいめいけん」が最初だったと思う。アメリカ人でもその映画を観て知っている人は多いし、今だと京都の「ザ・洋食屋キチキチ」というお店のオムライス映像をYouTubeで観て行く外国人が多いと聞く。

僕も柔らかいタイプのオムライスが好きだし、プレゼン的にも面白いし、今回はそのスタイルでやってみた。

japan170620-3.jpg

断トツで人気のオムライス。ここからオムレツにナイフを入れて切り開く Satoko Kogure-Newsweek Japan

ただ、このオムレツ動画が色々な媒体に紹介されると(実際に食べてない人からのコメントに)意外にも「気持ち悪い!」というのが多くて。

お店ではこれが一番人気だし、実際に食べてくれた食通のニューヨーカーには好評だが、海外の人みんなが半熟卵を好むかと聞かれると分からない。アメリカ人は玉子を生で食べない、というのもある。

アメリカでも「サニーサイドアップ(片面焼きの目玉焼き)」を頼むと普通は黄身はガチガチに堅いのではなく半熟なので、アメリカ人でも食べる人は食べるのだが。

【参考記事】NY著名フレンチシェフが休業、日本に和食を学びに来る!

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国投資家、転換社債の購入拡大 割安感や転換権に注

ワールド

パキスタンで日本人乗った車に自爆攻撃、1人負傷 警

ビジネス

24年の独成長率は0.3%に 政府が小幅上方修正=

ビジネス

ノルウェー政府系ファンド、ゴールドマン会長・CEO
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中