コラム

『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントにして

2026年03月11日(水)13時15分

ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN

<妻と義母、生後5カ月の長男を殺害した奥本章寛・死刑囚の家族に迫ったドキュメンタリーから、死刑をめぐる多くの論点が浮かび上がる>

宮崎市に行ったのは十数年前の夏だった。呼んでくれたのは地元の支援者たちだったと記憶している。

ならば彼らは誰を支援しているのか。宮崎市に暮らしていた奥本章寛だ。でも彼はこの場にいない。妻と義母、そして生まれて5カ月になる長男を、ハンマーで撲殺した容疑で逮捕されているからだ。


その後に奥本の死刑判決は確定した。彼は今、自らが処刑される日まで、福岡拘置所に収監されている。

僕は死刑を廃止すべきと思っている。そして80%以上の人が死刑制度を支持している日本では、自分が少数派であることも知っている。

しかも家族3人を殺害。冤罪ではない。奥本は全てを認めている。ならば死刑は当然ではないか。そう思う人は多いはずだ。

宮崎に行って驚いた。奥本を支援する人たちは、せいぜいが奥本の両親や兄弟など近親者、そして死刑廃止運動の人たちだろうと思っていたら、職場の同僚や近所の住人、つまり地元で奥本を知る多くの人たち、そして奥本が殺害した妻の弟(義母の息子でもある)も含めて被害者遺族の側も、彼の減刑を願っていた。できることなら救いたいと目に涙を浮かべる人も大勢いた。

プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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