コラム

イスラエル視点のドキュメンタリー映画『ホールディング・リアット』は観ることを逡巡したが......

2026年02月25日(水)17時00分

ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN

<ハマスに娘を拉致された一家の苦悩は、被害と加害の問題を単純化すべきでないと改めて気付かせてくれる>

ハマスに娘を拉致された家族を被写体としたドキュメンタリー。

『ホールディング・リアット』(3月7日日本公開)を観る前の情報はそれだけだった。その時の気持ちを正直に書けば、かなり逡巡があった。


ドキュメンタリーを撮るとき、視点をどこに置くかはとても重要だ。

特にイスラエル=パレスチナ問題のように沿革や現状が複雑であればあるほど、視点はとても大きな意味を持つ。そして多くの(全てではない)ドキュメンタリー制作者は、声が小さくて弱い側や虐げられた側に視点を置く。強い側の代弁なんてしたくない。

でもその視点を、ブランドン・クレーマー監督は拉致被害者に置くことを選択した。つまりイスラエルの側だ。ならばハマスの残虐さとネタニヤフ政権の正当性ばかりが強調されるのではないか。そう思いながら観始めた。

2023年10月7日朝、パレスチナ自治区ガザとの境界に近いキブツ(農業共同体)、ニールオズはガザから侵入したハマスの武装勢力に襲撃された。住民およそ400人のうち4分の1が殺害されるか人質となり、リアット・ベイニン・アツィリは夫アヴィヴと共にガザへと連れ去られた。

物語はその直後から始まる。襲撃で破壊され焼かれた多くの住宅や庭園。そこに立ち尽くすリアットの父であるイェフダ。

プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがドローン・ミサイル攻撃、ハルキウで少なくと

ワールド

トランプ氏、イランとの交渉「関心ない」 全指導者排

ワールド

アングル:ベトナム、新興国格上げ目前に海外資金流出

ワールド

アングル:メキシコ「麻薬王」拘束作戦の立役者、家族
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗雲...専門家「イランの反撃はこれから」「報道と実態にズレ」
  • 2
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 3
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示さない
  • 4
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 5
    【WBC】侍ジャパン、大谷翔平人気が引き起こした球場…
  • 6
    女性の顔にできた「ニキビ」が実は......医師が「皮…
  • 7
    大江千里が語るコロナ後のニューヨーク、生と死がリ…
  • 8
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ル…
  • 9
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 10
    「みんな一斉に手を挙げて...」中国の航空会社のフラ…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 9
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story