コラム

東京の中国料理店が「東北料理」ばかりなのはなぜか

2016年11月07日(月)17時15分
東京の中国料理店が「東北料理」ばかりなのはなぜか

thesomegirl-iStock.

<あの『不夜城』から20年――。2016年の在日中国人の"棲み分け"事情と、「日本人には安全、中国人には危険」になった歌舞伎町の現状> (写真はイメージです)

 こんにちは。新宿案内人の李小牧です。先日、新宿歌舞伎町の我が湖南菜館にやってきたお客さんからこんな質問をいただいた。

「李さんは歌舞伎町の裏社会に詳しいんですよね? 中国マフィアって、上海とか北京とか出身地ごとに分かれて抗争しているんですよね。『不夜城』って小説で読みましたよ。ちなみに今はどこの中国マフィアが歌舞伎町を支配しているんですか? やっぱり上海幇? 歌舞伎町にいる中国人は全員上海人なんですか?」

 小説『不夜城』(馳星周著)の出版は1996年。もう20年も前の話だけに若者だと知らない人も多いだろうが、映画化までされたベストセラーだ。歌舞伎町を舞台に上海幇(幇はグループの意)、北京幇など中華マフィアたちの争いを描いている。本作が日本人の中国マフィアに対するイメージに与えた影響はとてつもなく大きい。

 ただし、あくまでもフィクションだ。マフィアの話はおいておくとしても、在日中国人の居住地域は「池袋は北京、新宿は上海」というように出身地別で分かれてはいない。

 むしろ業種別で分かれていることが多いようだ。たとえば最近、東京など大都市部及び郊外の幹線道路沿いを中心に中国人経営のレストランが増えているが、その多くが旧満州の東北料理を出すお店だ。旧満州の経済は今かつてないほど低迷しているだけに、日本に活路を見いだそうという人が多いのだ。親戚や同郷人にレストラン経営の先輩がいるだけに、ビザの取得方法や店の経営方法までノウハウを教えてもらえるというメリットもある。

 かくして東京は世界屈指の"中国東北料理の都"となった。東北料理もおいしいが、別の味を試してみたいという方はぜひ我が湖南菜館に来てほしい(笑)。中国でもっとも唐辛子使用量が多い湖南料理があなたを待っている。

 繁華街で見かけるマッサージ店は福建人の従業員が多い。20世紀から出稼ぎの里として知られる福建省では、田舎に行くと出稼ぎ御殿を見かけることが少なくない。以前からの蓄積があるだけに、そろそろ利益がより大きいビジネスに転身する人が増えても良さそうなものだが、気質なのか、それともまだまだ貧しい人が多いのか、今も昔も日本でのビジネスでは同じポジションのままだ。

 そして上海人。かつては日本に来ている中国人といえば上海人ばかりだった。1980年代には「上海に来たのに、美人を1人も見かけないんだが......」「あー、それなら日本にいるよ」などというジョークもあったほどだ。ところが、それほど多かった上海人も今やめっきり数を減らしている。今や上海の地価は日本以上。給料も悪くないし、物価を考えれば日本以上の暮らしができると言っても過言ではない。残念ながら上海人にとって日本はあまり魅力的な街ではなくなってしまったというわけだ。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

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