コラム

英政治の「転換」をもたらしたクレッグ元副首相...複数政党制に移行する祖国に語った「教訓」

2025年05月22日(木)18時44分
ニック・クレッグ元英副首相による提言

デービッド・キャメロン元英首相(左)とクレッグ氏(2019年9月) Chris J Ratcliffe/Pool via REUTERS

<2008年の金融危機後、戦時挙国一致内閣以来という連立政権に参加した「リベラルの旗手」ニック・クレッグ氏が、再び転換点に差し掛かったイギリス政界に提言>

[ロンドン発]2010~15年に英保守党・自由民主党の連立政権を実現させ、米メタ(旧フェイスブック)のグローバル・アフェアーズ・アンド・コミュニケーションズ担当副社長を務めたニック・クレッグ元英副首相兼自由民主党党首はリベラルの盛衰を象徴する人物だ。

欧州懐疑主義の広がりと15年の自由民主党の壊滅的敗北を受け、英政界を引退。今度はSNSの規制撤廃を唱えるドナルド・トランプ米大統領の復活でメタを追われるように去った。英首相官邸のローズガーデンで「ニュー・ポリティクス」を唱えた清新な姿が筆者の脳裏に蘇る。

今でもリベラルの旗手とみなされるクレッグ氏が連立政権15周年を記念して5月20日、英シンクタンク「政府のための研究所」(IfG)で講演した。10年の英総選挙でクレッグ氏率いる自由民主党は史上最高の23%の支持を得て戦時挙国一致内閣以来という連立政権に参加した。

英国で息を吹き返す中道・自由民主党

大学授業料無償化を掲げるクレッグ氏は授業料の上限を年3290ポンドから9000ポンドに引き上げることに賛成。これに批判が殺到し、15年総選挙では57の議席を8に減らした。しかし先の地方選で163議席増やし保守党や労働党を上回った自由民主党は息を吹き返した。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日銀、民間金融機関から買い入れた株式の売却を10日

ワールド

原油先物は小幅続伸、ロシア巡るトランプ氏の「重大声

ビジネス

シンガポールGDP、第2四半期は前年比+4.3% 

ワールド

トランプ氏、ウクライナに「パトリオット」ミサイル供
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 2
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 6
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    ただのニキビと「見分けるポイント」が...顔に「皮膚…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    都議選千代田区選挙区を制した「ユーチューバー」佐…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 7
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 8
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story