コラム

得票33%で「信任」のメルケル、42%で「クビ寸前」のメイ

2017年09月29日(金)18時30分

先月末のドイツ総選挙で勝利したメルケルは4期目を決めた Kai Pfaffenbach-REUTERS

<アメリカ人はトランプがクリントンより少ない得票率で勝利したと憤るが、ドイツでもメルケルの与党は33%の得票率で総選挙に勝利した>

民主主義は奇妙なビジネスだ。

僕のアメリカ人の友達が最近ロンドンを訪ねて来て、ドナルド・トランプが2016年の米大統領選で、ヒラリー・クリントンよりも少ない得票率だったのにもかかわらず(トランプは46%でクリントンは48%)、いかにして不公平な勝利をつかんだか、というのを毒づいていた。

それもあって僕は、9月24日のドイツ総選挙でアンゲラ・メルケル率いる政党が33%の票を獲得してメルケルが「歴史的4選目」を決め、彼女が信任を得たとされているのもまた、奇妙な出来事に思えた。その一方で、6月のイギリス総選挙ではテリーザ・メイ首相率いる保守党が42%の票を獲得し、「クビ寸前」とささやかれている。

でも、こうした変則事例はもちろん、各国が独自の歴史を発展させていくのに従って生じていった、それぞれの選挙システムや憲法の特徴の違いによるのだろう。

EUはそれとは大きく異なり、2人の代表(欧州理事会議長と欧州委員会委員長)がいるのに、どうやって彼らが選挙で選出されているのか(または単に密室で選定されているのか)、彼らの政策が何なのか、構成国の国民の大多数が知らない。

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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