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APEC首脳会議、共同宣言採択し閉幕 多国間主義やWTOに触れず

2025年11月02日(日)09時08分

アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で韓国の李在明大統領(右)と握手する中国の習近平国家主席。2025年11月1日、韓国・慶州で撮影。 (2025年 ロイター/Yonhap)

Jihoon Lee Ju-min Park Eduardo Baptista

[慶州(韓国) 1日 ロイター] - 韓国で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が1日、閉幕した。世界貿易を巡る亀裂が深まる中、貿易における強靭性と利益共有の必要性を強調する共同宣言を採択した。

ただ、昨年の文書とは異なり、多国間主義や世界貿易機関(WTO)については触れられておらず、アナリストは米国の見解が宣言文に表れていると指摘する。

西江大学(ソウル)のホ・ユン教授(国際貿易論)は「多国間主義とWTOに基づく自由貿易秩序を回復するのは難しいということを加盟国が少なくともある程度認めた結果だ。世界の貿易秩序にパラダイムシフトが起きていることを否定できない」と話す。

米国が数十年にわたって支配してきた自由で開かれた貿易の安定した擁護者として自国を位置づけようとする中国の習近平国家主席は、2026年に深センでAPECを開催すると発表した。

習氏は閉会の辞で「世界人工知能協力機構(WAICO)」の設立の設立を提案した。一方、会議は人口動態の変化とAI(人工知能)に関する他の宣言も採択。しかし、AI規制についての言及はなかった。

広東国際戦略研究院の李形教授は「中国は明らかに、トランプ米大統領がAPECを欠席したことを利用して、米国の後退と中国の台頭を懸念する国々を積極的に取り込もうとしている」と語る。

「トランプ氏のせいでもはや米国の後ろ盾を完全に当てにできない韓国のような国々を、覇権ではなく共通の豊かさを求めているのだと中国が安心させようとすることは間違いない」と述べた。

しかし、ホ氏やアナリストらは今回の共同宣言について、米国が自由貿易を損なっているという印象を与えることを加盟国が警戒していた様子もうかがえると指摘。「米国を排除した新たな貿易秩序ができると考えている国はほとんどない」と話した。

ロイター
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