ニュース速報

ワールド

ロシア部分動員は「30万人の人質」、短期攻勢につながらず=専門家

2022年09月29日(木)05時12分

ロシアがウクライナでの戦闘継続に向け予備役を対象とした部分動員を開始したことについて、専門家は「政治的ゲームチェンジャー」としながらも、短期的にはロシア軍の攻勢にはつながらないとの見方を示している。カリーニングラードで8月撮影(2022年 ロイター/Vitaly Nevar)

[トロント 28日 ロイター] - ロシアがウクライナでの戦闘継続に向け予備役を対象とした部分動員を開始したことについて、専門家は「政治的ゲームチェンジャー」としながらも、短期的にはロシア軍の攻勢にはつながらないとの見方を示している。

トロント大学のムンク国際問題・公共政策研究所が27日主催したオンラインイベントで、元英空軍パイロットで英国の防衛駐在官として2016年までロシアに駐在したカール・スコット氏は、動員可能性のある人員は「追加的な30万人の『人質』に過ぎず、軍隊ではない」と指摘。ミシガン大学アナーバー校のユーリー・ジューコフ准教授(政治学)は、こうした人員は「戦線を維持するための防衛ラインに投入されるにとどまる」とし、「冬前までにロシア軍の攻勢につながるとは考えていない」と述べた。

スコット氏は「専門的な訓練を受けた兵士ではないため脅威にはなり得ないと考えるのは簡単だ」としながらも、ロシアの作戦が失敗した場合、「武装した30万人の怒れる男」は極めて危険な存在になると指摘。支配地域で実施されたロシアへの編入の是非を問う「住民投票」に触れ、「ウクライナ軍が(この地域で)多くのロシア兵を殺さざるを得ない事態になれば、(地域的な紛争から)全面的な戦争に発展する」と危機感を示した。

ジューコフ氏は「ロシアが制圧したザポロジエとヘルソンの一部地域で、ウクライナ人を兵士として動員しているとの報告を受けている」とし、こうした兵士はロシアのプロパガンダに利用されると予想。「ロシアが解放したウクライナ人が今はロシア軍の兵士として戦っている、『ナチ化』したウクライナ政府が自国民を銃撃している、といったプロパガンダを掲げることは十分想定される」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米英欧など18カ国、ハマスに人質解放要求 ハマスは

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

米新規失業保険申請5000件減の20.7万件 予想

ビジネス

ECB、インフレ抑制以外の目標設定を 仏大統領 責
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中