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アングル:北朝鮮訪問の中国人観光客止まらず、国境都市が緩和

2017年12月22日(金)15時48分

 12月20日、先月のトランプ米大統領訪中を前に中国当局が非公式に禁止したにもかかわらず、中国人観光客が依然として国境沿いの丹東市から北朝鮮の首都平壌を訪れていることが分かった。写真は中国人観光客。丹東付近で8月撮影(2017年 ロイター/Philip Wen)

Sue-Lin Wong

[北京 20日 ロイター] - 先月のトランプ米大統領訪中を前に中国当局が非公式に禁止したにもかかわらず、中国人観光客が依然として国境沿いの丹東市から北朝鮮の首都平壌を訪れていることが分かった。観光業界筋が明らかにした。

関係筋2人がロイターに語ったところによると、中国人観光客40人の一行は15日、丹東から平壌に向けて出発した。地元当局が、北朝鮮観光を制限するという中央政府の指示を積極的に実施していないことを示している。

「指示が出されて以来、丹東から北朝鮮を訪れた最大の観光客グループだった」と、ある旅行業者は語る。列車で北朝鮮を訪れる4日間のツアーに参加する一行だという。

この記事に関し、丹東市の観光局は取材を拒否した。コメントを求められた中国外務省は「状況を理解していない」とした。

中国の地元企業は、良いときであろうが悪いときであろうが、中央あるいは地方当局が導入した政策の抜け穴を見つけることで知られる。

「政府の政策を迂回する方法は必ずある」と、丹東で観光業に携わるある人物は話す。「中国人とはそういうものだ」

「丹東の規制解除に、中央政府は非常に腹を立てると思う」と、この観光業者は語った。

<北朝鮮の稼ぎ頭>

北朝鮮への観光は国連により禁止されておらず、同国にとっては残された数少ない外貨獲得手段となっている。シンクタンク韓国海洋開発院の試算によると、北朝鮮は観光業によって年間約4400万ドル(約50億円)の収入を得ている。

北朝鮮が過去1年でミサイル開発を加速させているのを受け、国連は同国への制裁を強化しており、石炭や海産物や繊維など主要産業の輸出を抑制している。

北京を拠点に北朝鮮ツアーを企画する高麗旅行社のサイモン・コッカレル氏は、平壌で11月半ばに中国人観光客を乗せたバス3、4台を目にしたが、「彼らがどこから北朝鮮に入国したのか、またどのような査証(ビザ)で来ているのか分からない」と語った。

「北朝鮮のビザは、行ける場所、行けない場所について明記していない。したがって、中朝国境を挟んで丹東の向かい側の新義州市、あるいは羅先特別市から入国したら、平壌へ向かうことが可能だ。北朝鮮人は気にしない」

両市は、中国人観光客が陸路で北朝鮮を訪れる際に人気の入国地点となっている。

<トランプ大統領の訪中>

中国は、北朝鮮への旅行制限を公には発表しておらず、国連の調和を損なうものとして一方的な制裁には強く反対している。

だが、トランプ米大統領による初めての中国公式訪問を翌日に控えた11月7日、丹東市の観光局が市内の旅行業者に対し、平壌へのツアーを中止するよう指示したと、ロイターは伝えた。

北朝鮮のミサイル・核プログラムに対する制裁を完全履行することで同国に圧力をかけるため、協力関係にある中国の習近平国家主席について、トランプ大統領はしばしば称賛を送っている。

中朝国境にある人口80万人の中国北東部遼寧省丹東市は、主要な中国側貿易拠点であり、北朝鮮観光ツアー会社の大半が同市に存在する。国連制裁は今年、特に丹東経済を直撃した。

北朝鮮観光ツアーのほぼすべてが中止され、丹東に拠点を置いて伝統的に北朝鮮とビジネスをしてきた多くの企業が苦境に陥っていると、複数の関係筋がロイターに明かした。

「成功している中国人ビジネスマンの多くが休暇で旅行に出ている。今ここにいても、何もすることがないからだ」と、丹東の中国人ビジネスマンの1人は言う。

中国の対朝貿易はすでに、過去数カ月で最低水準にある。北朝鮮にミサイル・核プログラムを放棄させるための国連決議を厳しく実行していると、中国政府は繰り返し主張している。

北朝鮮は今年、ミサイル発射実験のペースを加速しており、11月28日に実施した最新の実験について、核弾頭を搭載して米全土を攻撃できる新型大陸間弾道ミサイルの発射実験だったとしている。

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

ロイター
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