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入国制限の米大統領令、保守派が過半の最高裁で最終決着へ

2017年05月29日(月)15時02分

 5月26日、トランプ大統領が打ち出したイスラム圏6カ国からの入国を制限する大統領令は、米連邦高裁が一時差し止めの判断を維持する判断を示した。議論はまもなく保守派の判事が過半数を占める最高裁へと舞台を移しそうだ。写真は2017年4月、ゴーサッチ最高裁判事の就任式に出席したロバーツ長官(左)ら(2017年 ロイター/Carlos Barria)

[ワシントン 26日 ロイター] - トランプ大統領が打ち出したイスラム圏6カ国からの入国を制限する新たな大統領令は、米連邦高裁が一時差し止めの判断を維持する判断を示した。これを受けて、議論はまもなく保守派の判事が過半数を占める最高裁へと舞台を移しそうだ。

リッチモンド連邦高裁は25日、メリーランド州の連邦地裁による大統領令の一時差し止めに関し、支持する判断を示した。これを受け、セッションズ司法長官は最高裁に上訴する方針を示した。

ただ司法省は、上訴する時期やハワイの連邦地裁による同様の判断に対する控訴審の結果まで見極めてから対応するのか明らかにしていない。

連邦最高裁には4月、保守派のゴーサッチ氏が判事に就任。保守派とリベラル派の判事の比率は5対4で、もし保守派の判事全員がトランプ政権を支持するなら、大統領令の効果は復活することになる。

ゴーサッチ氏は人事の承認に先立つ議会上院での証言で、いかなる大統領に対してもその見方を追認するだけの存在にはならないとの姿勢を示している。

最高裁判事らは、今後数週間内に意見陳述の場を設けるかどうか決める可能性があるが、年末が迫ってくる時期までに実際に開催される見通しは低く、裁定が出るのはさらにその先になる。トランプ氏が大統領令に署名してから最終決着までに実に1年が経過する可能性もありそうだ。

ジョージ・メイソン大のイリヤ・ソミン教授は、最高裁の判事構成は5対4で保守派が優勢の状況ではあるものの、保守派の判事がリベラル派に同調し、大統領令を覆す判断を下す可能性があると指摘。保守派判事というものは、人種や宗教といった理由での政府によるあらゆる差別に対し、強硬姿勢を示すことが珍しくなく、政府による信教の自由への侵害に懸念を持っていると説明する。

さらに、大統領令への反対派にとっては、移民に関して2015年の最高裁判決で示されたアンソニー・ケネディ判事の判断も主張のよりどころになるかもしれない。ケネディ判事は移民に関する文脈で、もし政策に不誠実さを示す根拠があるのであれば、政府の対応を問題にすることは可能だとする判断を示している。

25日の高裁判断でロジャー・グレゴリー裁判長は、政府の対応の不誠実さを示す十分な根拠が提示されていると明言。国家安全保障という漠然とした言葉を使っているが、宗教的な不寛容さも垣間見えるとし、大統領令の背景にある国家安全保障以外の理由も調べるのが相当だとの見方を示した。

ロイター
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