ニュース速報

ワールド

アングル:イランの改革派躍進、貿易や投資に追い風 保守支配は不変

2016年03月02日(水)16時24分

 2月29日、26日投票のイラン国会と専門家会議の同時選挙で、ロウハニ大統領を支持する穏健・改革派が躍進し、大統領と対立する保守強硬派は退潮が鮮明となった。写真はイラン国旗。ウィーンで1月撮影(2016年 ロイター/Leonhard Foeger)

[ベイルート 29日 ロイター] - 26日投票のイラン国会と専門家会議の同時選挙で、ロウハニ大統領を支持する穏健・改革派が躍進し、大統領と対立する保守強硬派は退潮が鮮明となった。これを受け、主要国との核合意に基づく制裁解除を実現させた現政権による国際社会への関与が一段と深まる可能性がある。

何年も孤立してきたイランにとってこの選挙は重大な岐路となり、ロウハニ政権や同政権の対外融和政策に対する信任投票の意味があると専門家は指摘していた。

ただ、イスラム共和国を掲げるイランには共和制と宗教界による二重の支配構造があり、最高指導者ハメネイ師に近い保守強硬派が決定的な権力を握っていることに変わりはない。

再選されなかった議員の大半は核合意に強く反対する立場だった。落選したある議員は交渉に当たったザリフ外相を裏切り者と呼び、別の議員は世界の強国相手に譲歩したと主張し、交渉人をセメントで埋めるとすごんだ。

改革派を支持する「マルドムサラリ」紙は、社説の中で「今回の選挙はイラン・イスラム共和国の歴史の転換点となり得る」と述べた。同紙編集長は首都テヘランで議席を獲得した。

編集長は「この選挙の最大の功績は改革派が支配層に戻り、もう扇動者や侵入者呼ばわりされないことだ」と語った。保守強硬派が改革派は西側の回し者だと批判していたことを指す。

次の最高指導者を選出する権限がある専門家会議(定数88)の選挙で、ロウハニ大統領率いる中道・穏健派は、テヘランの16議席中、15議席を獲得した。落選した議員の中には、専門家会議のヤズディ議長や、アフマディネジャド前大統領を支えた宗教学者のメスバヤズディ師など、保守強硬派の重鎮が含まれていた。

唯一の例外として護憲評議会のジャナティ議長が16議席目に滑り込んだ。保守派が支配する護憲評議会は選挙立候補者の事前審査などを行うが、改革派や穏健派の多くの候補を不適格として承認しなかった。

イラン国会(定数290)の選挙でも、内務省が発表した開票結果によると、改革派がテヘラン選挙区の全30議席を獲得。前回のわずか2議席から大躍進した。

首都以外では穏健派のリードが限定的となり、国会と専門家会議のいずれでも保守派が多くの議席を守った。

ファズリー内相は「健全で合法的でとても良い選挙だった」と述べた。投票率は62%だった。

反欧米の立場をとる最高指導者ハメネイ師は、選挙後初めてのコメントで投票率の高さを評価した。開票結果には直接触れず、新たに選出された国会と専門家会議が西側の影響を受けるべきでないことを示唆した。

外資を呼び込むためにロウハニ大統領が打ち出した新たな石油・天然ガス開発契約に反対していた保守派の有力議員らも落選した。

これにより、外国からの投資や西側諸国との貿易を促進するために経済政策を転換する道が開かれると、実業家やアナリストは指摘する。

改選前の議会は、現政権が進める民間セクターの強化や汚職対策、外資誘致にとってブレーキとなってきた。

「新しい議会ははるかに良い経済情勢をもたらす」と改革派のハタミ元大統領の顧問を務めたサイード・レイラズ氏は指摘する。

地元メディアがハタミ元大統領の名前を出すことや写真を公開することは禁止されている。そのためハタミ師はインターネット上で29日声明を出し、開票結果についてイラン国民を称賛し、当選した議員らが経済発展や政治的自由への取り組みを推進するように求めた。

最高指導者ハメネイ師に近い「ケイハン」紙の編集責任者は、改革派が「勝利したという錯覚」を生み出していると非難した。

この責任者は「イランの統治制度では、いずれの政治党派も基本原理に根差した主要な政策を変えることはできない。国民の投票は憲法の範囲内で与えられた責務に限定される」と書き記した。

同国の政治制度は保守派に大きな権限を委ねており、例えば護憲評議会は、議会で可決されたすべての法律を審査する権限を持つ。

これまでの開票結果をロイターが集計したところ、ロウハニ大統領の陣営と独立系勢力の躍進が目立った。改革派が全議席のうち30%、保守派が40%、独立系が17%を占め、残る13%は決選投票をする必要がある。また女性が12議席以上を獲得した。

改選前は、改革派議員が占める割合は10%に満たなかった。

アナリストは独立系議員が多数当選したことが重要だと指摘する。ロウハニ陣営に協力して多数派を形成する可能性があるためだ。

政治アナリストのHamid Farahvashian氏は「新しい議会の正確な姿が明らかになるまでに数カ月かかる。独立系議員が議会の決定に重要な役割を果たすだろう」と述べた。

(Babak Dehghanpisheh記者 翻訳:長谷川晶子 編集:加藤京子)

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

ニュース速報

ワールド

米大統領選のTV討論会、過去最高の1億人が視聴か

ワールド

北朝鮮の国連加盟資格、見直すべき=韓国外相

ビジネス

デンマーク海運大手マースク、競合勢買収に意欲=会長

ワールド

英国のEU離脱交渉、2年かからない可能性=ジョンソ

MAGAZINE

特集:進化する中国軍

2016-10・ 4号(9/27発売)

高学歴人材、最新鋭兵器、洗練された組織......。かつてのイメージを覆す人民解放軍の知られざる変貌

人気ランキング

  • 1

    エジプトの過激派にナチスからの地雷の贈り物

  • 2

    戦略なき日本の「お粗末」広報外交

  • 3

    米テレビ討論、クリントン「二重の負担」で不利

  • 4

    成人したら国外退去、中米の子供たちの末路

  • 5

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 6

    中国当局、国連が資産凍結した北朝鮮銀行幹部を核開発関連容疑で調査

  • 7

    クルーニー夫妻、虐殺でISISを告発。「覚悟はできている」

  • 8

    米大統領選のテレビ討論会、過去最高の1億人が視聴か

  • 9

    トランプ当選の可能性はもうゼロではない

  • 10

    ヨーロッパを追われアメリカに逃れるロマの人々

  • 1

    クルーニー夫妻、虐殺でISISを告発。「覚悟はできている」

  • 2

    X JAPANのYOSHIKI、ニューヨークでコンサートを行うと発表

  • 3

    エジプトの過激派にナチスからの地雷の贈り物

  • 4

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 5

    中国機内誌が差別的記述、撤回しても消せない傍若無人ぶり

  • 6

    安楽死が合法的でなければ、私はとうに自殺していた

  • 7

    若者がクルマを買わなくなった原因は、ライフスタイルの変化より断然「お金」

  • 8

    家事をやらない日本の高齢男性を襲う熟年離婚の悲劇

  • 9

    ヨーロッパを追われアメリカに逃れるロマの人々

  • 10

    中国獄中で忘れられるアメリカ人

  • 1

    金正恩「公式行事での姿勢が悪い」と副首相を処刑

  • 2

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 3

    クルーニー夫妻、虐殺でISISを告発。「覚悟はできている」

  • 4

    中国で性奴隷にされる脱北女性

  • 5

    改めて今、福原愛が中国人に愛されている理由を分析する

  • 6

    蓮舫氏へ、同じ「元・中国人、現・日本人」としての忠言

  • 7

    シロクマに包囲され逃げられないロシア観測隊、番犬犠牲に

  • 8

    「スタバやアマゾンはソーセージ屋台1軒より納税額が少ない」オーストリア首相が猛批判

  • 9

    「お母さんがねたので死にます」と自殺した子の母と闘った教師たち

  • 10

    核攻撃の兆候があれば、韓国は平壌を焼き尽くす

 日本再発見 「東京のワンテーマ・ミュージアム」
アンケート調査
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

0歳からの教育 育児編

絶賛発売中!