ニュース速報

ビジネス

アングル:FRB議長「ディスインフレ」で軟着陸期待、くすぶる悲観論

2023年02月02日(木)17時10分

 米FRBが利上げをペースダウンさせた。パウエル議長の会見での発言は予想以上にハト派と一部で受け止められ、米経済ソフトランディング(軟着陸)期待を押し上げた。ただ歴史的なインフレを経済を弱らせずに抑制できるのか、懐疑的な見方がくすぶっている。写真は2019年3月、ワシントンのFRB(2023年 ロイター/Leah Millis)

[2日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が利上げをペースダウンさせた。パウエル議長の会見での発言は予想以上にハト派と一部で受け止められ、米経済ソフトランディング(軟着陸)期待を押し上げた。ただ歴史的なインフレを経済を弱らせずに抑制できるのか、懐疑的な見方がくすぶっている。

1月31日から2月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、利上げ幅を0.25%ポイントに縮小した。先月発表された昨年12月の消費者物価指数(CPI)は2年半ぶりに前月比で低下。前年比の上昇率も減速していた。

パウエル議長は会見で、インフレとの戦いで進展があったと認め、インフレ押し下げに十分と考える水準まで追加利上げは「あと数回(a couple more)」のところまで来ている可能性があると述べた。

インベスコ・インベストメント・ソリューションズのシニアポートフォリオマネジャー、アレッシオ・デロンギス氏は「0.25%利上げを数回というのは基本的に微調整。これを現在の市場は好感している」と述べ、引き締めサイクルの終わりが見えてきたと指摘した。ここ数週間堅調な株式、新興市場、高利回り債券などが一段高になるとみている。

ナティクシス・インベストメント・マネージャーズ・ソリューションズのポートフォリオストラテジスト、ギャレット・メルソン氏は、インフレ抑制を難しくする懸念もあるリスク資産の幅広い上昇に水を差すタカ派「口撃」がなく、市場はこれを歓迎したと指摘。パウエル議長が「ディスインフレ(インフレ低下)」に繰り返し言及したことも投資家にとって心強い材料となった。

<懐疑論>

それでもFRBが記録的な物価高を経済に打撃を与えることなく抑え込めるか、懐疑的な向きは多い。

資産運用大手ブラックロックのiShares投資戦略チームのシニアストラテジスト、クリスティ・アクリアン氏は「インフレ率を最終目標まで下げるには、短期間で軽微だしても景気後退は免れない」とみる。

ブラックロック、ウェルズ・ファーゴ、ニューバーガー・バーマンなど、銀行や資産運用会社はここ数週間、景気後退説を繰り返し唱えている。

昨年3月に2019年以来初めて逆転した米国債のイールドカーブは今も大幅な逆転状態で景気後退入りのシグナルを発している。

FRBの政策金利予測では、今年5─5.25%まで上がり、少なくとも年内はその水準を維持することになっている。パウエル議長は1日の会見で近い将来に利下げに転換することはないとの認識を示した。

バンエックの債券ETFポートフォリオ管理責任者、フラン・ロディロッソ氏は「(利下げは)インフレ低下への対応か、それとも景気減速への対応になるか、私は後者だと思う」と述べた。

(Davide Barbuscia記者、Lewis Krauskopf記者)

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米テスラ、従業員の解雇費用に3億5000万ドル超計

ワールド

中国の産業スパイ活動に警戒すべき、独情報機関が国内

ワールド

バイデン氏、ウクライナ支援法案に署名 数時間以内に

ビジネス

米耐久財コア受注、3月は0.2%増 第1四半期の設
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 2

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 3

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」の理由...関係者も見落とした「冷徹な市場のルール」

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 6

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    コロナ禍と東京五輪を挟んだ6年ぶりの訪問で、「新し…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中