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日銀会合は政策・見通し共に据え置き、総裁は出口観測けん制

2018年01月23日(火)18時43分

 1月23日、日銀は金融政策決定会合で、短期金利をマイナス0.1%、長期金利(10年物国債利回り)をゼロ%程度とするよう国債買い入れを進める「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)」の現状維持を決めた。写真は都内の本店、2015年5月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 23日 ロイター] - 日銀は22-23日の金融政策決定会合で、短期金利をマイナス0.1%、長期金利(10年物国債利回り)をゼロ%程度とするよう国債買い入れを進める「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)」の現状維持を決めた。同時に公表した「展望リポート」では2019年度に2%の物価目標を達成できるとの従来見通しを堅持した。記者会見で黒田東彦総裁は、物価目標達成は程遠いとして現在の金融緩和を継続する姿勢を繰り返し、市場にくすぶる金利調整などの観測をけん制した。

<2%目標になお距離、ETF見直しは「一部の議論」>

9人の政策委員が示す数値の中央値で、17─19年度の見通しを示す展望リポートは成長率、物価見通しともに昨年10月の前回公表値を据え置いた。

金融機関に低利の資金を供給して融資拡大を後押しする貸し出し支援オペなどについて、受付期間を1年延長した。

会見で黒田総裁は物価は「2%の目標になお距離がある」として、大規模な金融緩和を縮小する「出口対応の局面に至っていない」と指摘。現在の大規模な金融緩和を継続する姿勢を改めて強調した。

日銀が9日実施した超長期債の買い入れ額が市場の予想を下回り、為替市場がこれを材料視し円高方向に振れ、日銀側の対応に注目が集まっていた。会見で黒田総裁は「日々の国債買い入れが、先行きの政策を示すことはない」と述べ、国債買い入れ額の減額をもって日銀が金融緩和の縮小を目指していることはないとの立場を改めて示した。

また日銀が公表している「主な意見」によると、金融政策を議論する審議委員の一部が、年間6兆円の上場投資信託(ETF)買い入れについて見直しの必要を示唆しているが、黒田総裁は「ごく一部の議論だ」として、早期見直し観測をけん制。「現時点でETF買い入れを見直す必要ない」と明言した。

<円買いの糸口つかませず>

為替市場は正午過ぎの決定内容公表直後ドル円で20銭程度円高方向に振れたが、午後3時半の総裁会見スタート後は30銭程度円安方向に戻した。「総裁は、出口検討のタイミングに至ってないと否定。ETFの買い入れも現時点で見直す必要はないとした。投機筋に仕掛け的な円買いの糸口をつかませなかった」(あおぞら銀行 市場商品部部長 諸我晃氏)。「総裁人事前、そつない回答に終始した優等生の印象だった」(大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト)との声もあった。

日銀は3月に副総裁2人、4月に総裁の任期を迎え、次期正副総裁の人事を目前に控えている状態。この日の決定は、人事公表前の政策変更はない、との一部の市場観測に沿った内容となった。

(竹本能文 編集:石田仁志)

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