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焦点:イタリア総選挙、国債買いの好機となるか
1月17日、イタリアは3月4日に総選挙を控えるが、債券に投資する大手機関投資家は平静を保っており、選挙前にイタリア国債が下落すれば買い場になるとの声すら出ている。写真はローマで2016年3月撮影(2018年 ロイター/ Stefano Rellandini)
[ロンドン 17日 ロイター] - イタリアは3月4日に総選挙を控えるが、債券に投資する大手機関投資家は平静を保っており、選挙前にイタリア国債が下落すれば買い場になるとの声すら出ている。
世論調査では反体制派「五つ星運動」の支持率が高いが、ユーロ圏の景気回復が政治不安を打ち消している格好だ。
JPモルガン・アセット・マネジメントのニック・ガートサイド最高投資責任者(CIO)は「総選挙は投資家にとってまさに買いを入れる好機だ」と話す。「一歩下がってイタリアとユーロ圏経済の堅調ぶりに目を向ければ、イタリア国債は総選挙によってますます魅力が増している」という。
JPモルガン・アセット・マネジメントはイタリア国債が割安だとみている。指標となる10年物ドイツ国債とイタリア国債の利回り差は現在の約145ベーシスポイント(bp)から90bp程度に縮小する可能性があるという。
一方、債券運用世界最大手のパシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)のアナリスト兼ポートフォリオマネジャー、ニコラ・マイ氏によると、同社のイタリアに対する見方は中立的だ。
ユーロ圏経済が昨年、米国を上回る好調ぶりを示したことで投資家にとって状況は一変したが、イタリアはその中で重要な役割を果たした。昨年の成長率は当局の予想する1.5%を上回る見通しで、昨年10月にはスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が約30年ぶりに格付けを引き上げた。
イタリア国債相場の下落を見込んでいた投資家は打撃を被り、弱気派で知られたヒュー・ヘンドリー氏は昨年末、ファンドを閉鎖した。
ステート・ストリートのETF戦略ヘッドのアントニー・レスネ氏は、景気が良好なため、総選挙で政治的なショックが発生しても格下げされる可能性が低いのが最も重要な点だと指摘した。
さらにイタリアの選挙制度ではポピュリスト的な政策を掲げる政党が政権の座に就くのが難しい。また、こうした政党は反ユーロ的な主張をトーンダウンさせている。五つ星運動の幹部は先に、イタリアのユーロ圏離脱はもはや同党の長期的な政策目標ではないと述べた。
PIMCOのマイ氏は、イタリアは政権が不安定で改革重視でない状態が普通なので、ある種の大連立政権が樹立されればまずまずの結果だろうと述べた。
ただ、総選挙が必ずしも事態の緊迫と無縁というわけではない。例えば総選挙の日程が最初に浮上した昨年12月には、イタリアとドイツの国債利回り差が3週間で30bp程度広がった。
既にこうした利回り差の拡大分の大半は解消したが、多くの投資家は今後市場のボラティリティが高まるとみている。
フランクリン・テンプルトンの欧州債券ヘッドのデービッド・ザーン氏は「総選挙によるボラティリティ上昇を見込んでイタリアでの債券投資を半分程度に圧縮した。ボラティリティが収まれば保有額を再び増やすつもりだ」と話した。
ザーン氏によると、フランクリン・テンプルトンは基本的にイタリアを好んでいる。投資を圧縮したのは投資戦略によるもので、相場が下げれば買い増す余力はあるという。
(Abhinav Ramnarayan、Dhara Ranasinghe、Fanny Potkin記者)