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焦点:中国不動産市場で強まる大手の支配力、シェア過去最大

2018年01月12日(金)08時03分

 1月10日、中国不動産市場では販売鈍化が予想され、開発会社が抱える債務への懸念も根強い。それでも大手デベロッパーは支配力を一段と強化し、市場シェアは過去最大になりつつある。北京で昨年12月撮影(2018年 ロイター/Jason Lee)

[香港 10日 ロイター] - 中国不動産市場では販売鈍化が予想され、開発会社が抱える債務への懸念も根強い。それでも大手デベロッパーは支配力を一段と強化し、市場シェアは過去最大になりつつある。

シティグループの試算では、中国の10大デベロッパーの市場シェアは足元の約27%から年内に35%近くまで高まる見込み。2012年のシェアは14.2%にすぎなかった。

不動産調査会社CREIS(中国房地産指数系列)によると、売上高が500億元超となったデベロッパーの数は2017年が40社と16年の25社から増え、売上高伸び率も53%から84%に高まった。対照的に売上高が100億─500億元のデベロッパー数は106社から104社に減った。

また国内全体の不動産取引は5%減少すると見込まれているが、証券会社や格付け会社のアナリストの見立てに基づくと、香港上場のデベロッパーの今年の売上高伸び率は平均30%になる可能性がある。17年の伸びは平均40%だった。

ただし成長にはリスクが伴う。土地の仕入れが膨らむのは、デベロッパーの借金が増えることを意味し、以前に宣言していた債務圧縮計画の実現も雲行きが怪しくなっている。

中国恒大地産<3333.HK>と融創中国<1918.HK>は、17年上期の負債比率が200%超と業界で最も高かった。両社とも昨年10月、債務を減らす方針を示したものの、土地購入はやめていない。

市場が調整局面を迎えればデベロッパーの流動性が試練にさらされるだろうが、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のディレクター、クリストファー・イップ氏はそうしたシナリオが実現しても大きな影響は想定されないと断言する。

イップ氏は「格付けを付与されたデベロッパーは、手元資金が乏しく借り換えを見通せない一部を除き、債務返済ができなくなる確率が大きいとは思わない。彼らは土地購入の前に資金を確保しているはずだ」と述べた。

いくつかの大手デベロッパーはロイターに、今年の売上高伸び率は2桁になるとの自信を示した。上海を拠点とするあるデベロッパーの幹部は「昨年われわれは多くの集合住宅を売っており、在庫補充が必要になる。われわれの土地購入予算は昨年より規模を拡大しなければならない」と話した。

さらに多くの投資家がデベロッパーの債務に絡むリスクよりも売上高に注目している結果が、株価の高騰に反映されている。中国の不動産株は17年の香港市場で最も値上がりしたセクターの1つ。恒大地産は480%、融創は460%、碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)<2007.HK>は270%それぞれ上昇した。

もっとも一部アナリストは、大手デベロッパーが成長ペースを維持できるかどうか疑問を抱いている。

CLSAのアナリスト、ニコル・ウォン氏は「中国不動産株が17年に上昇したのは、売上高が伸びたおかげだった。だがこの勢いは今年に入って鈍っている。17年は売上高の多くが中小都市由来だったものの、流動性の引き締まりとともにこれらの都市での販売が以前よりも難しくなる」と指摘した。

(Clare Jim記者)

ロイター
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