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焦点:日銀は政策維持の公算、緩和長期化の副作用も議論へ
12月18日、日銀は20、21日に開く金融政策決定会合で、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する現行の金融緩和策の維持を決める見通しだ。写真は6月に東京で撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 18日 ロイター] - 日銀は20、21日に開く金融政策決定会合で、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する現行の金融緩和策の維持を決める見通しだ。
景気が好調な一方、物価の足取りが鈍い中で、超低金利政策の長期化が金融仲介機能に及ぼす悪影響を懸念する声も出ており、緩和政策の副作用に関する議論がどのように展開されるのか注目される。
15日に公表された12月調査の日銀短観では、大企業・製造業の業況判断DIが5四半期連続で改善、日本経済は内外需のバランスのとれた拡大を続けていることが確認された。
内閣府が8日発表した7─9月期の国内総生産(GDP)の2次速報は、前期比年率2.5%増と7四半期連続のプラス成長となり、ゼロ%台後半と見込まれる潜在成長率を大きく上回った。
これらの指標を受け、日銀内では景気について、「想定より強め」(幹部)との見方も出ており、先行きに自信を深めている。会合では「緩やかに拡大している」との景気判断を維持する見通しだ。
一方、物価面は10月消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)が前年比0.8%上昇となり、着実にプラス幅を拡大させているものの、日銀が目指す2%には依然として距離がある。
特に重視している生鮮食品とエネルギーを除いた指数は同0.2%上昇とゼロ%近辺で推移しており、足元の物価は「なお弱め」(黒田東彦総裁)との認識だ。
もっとも、GDPや短観で明らかになったように、国内需給は一段と引き締まっており、特に人手不足は企業にとって深刻な問題になっている。
それでも物価が緩慢な理由について日銀では、企業による省力化投資や過剰サービスの見直しなど生産性の向上によって、賃金上昇圧力を吸収していることが一因とみており、「悲観するものではない」(別の幹部)との声もある。
物価の重要な押し上げ要因である需給ギャップは、足元でさらにプラス幅を拡大させている可能性が大きく、物価2%目標に向けたモメンタム(勢い)は維持されているとの見方が大勢。
金融政策運営は現行の緩和策を継続することで、緩和効果とインフレ期待の強まりを促していく考えだ。
今回の会合では、長期化する超低金利政策の副作用に関する議論が注目される。黒田総裁は11月にスイスでの講演で、金利を下げ過ぎると金融仲介機能に悪影響を与え、かえって金融緩和効果が減衰するとしたリバーサル・レートという考え方に言及した。現在のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策は、過度な金利低下を抑制することで、金融仲介機能への悪影響にも配慮している。
ただ、物価上昇が緩慢な中で、超低金利政策の長期化が視野に入ってくるとの見方も金融市場にはあり、超緩和策の長期化とその副作用について、どのような見解が政策委員会のメンバーから出てくるのか、注目を集めそうだ。
他方、金融機関が全体として充実した自己資本を有していることもあり、日銀では、現時点で「金融仲介機能が阻害されているとは考えていない」(黒田総裁)と判断している。
同時に預貸金利ざやの縮小で、地域金融機関を中心に本業収益が減少傾向をたどっているところも少なくなく、そうした現象と金融緩和策の副作用との関連をどのように判断するかも議論のポイントの1つになりそうだ。
一方、上昇基調が続く株価や不動産など資産価格の動向にも注意が必要との声が、一部にある。金融政策運営は、物価動向だけでなく多方面に存在する副作用のリスクにも目配りが必要な局面に入りつつある。
(伊藤純夫 竹本能文 編集:田巻一彦)