ニュース速報

ビジネス

段階的利上げの継続必要、物価弱くても=イエレン氏

2017年09月27日(水)06時02分

 9月26日、イエレン米FRB議長は、段階的な利上げの継続が必要との認識を示した。写真はワシントンで6月撮影(2017年 ロイター/Joshua Roberts)

[クリーブランド 26日 ロイター] - イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は26日、インフレ動向を巡り不透明性が存在するなかでも、段階的な利上げの継続が必要との認識を示した。また物価動向をめぐる見極めが困難であることを認めた。

議長は、全米企業エコノミスト協会(NABE)での講演で、インフレモデルの特定や労働市場の基調的な強さ、インフレ期待などを巡り、FRBが判断を誤る可能性はあると指摘。段階的な利上げ計画を撤回するほどインフレ動向が大きく変化したことを示す証拠は揃っていないが、そうなる可能性を含め依然オープンである必要があると語った。

さらに、インフレ率が2%に戻るまで金融政策を据え置くことは賢明でないとも指摘。「フェデラル・ファンド(FF)金利を控えめな形で追加的に引き上げなければ、労働市場が将来的に過熱してインフレ問題が起こり、景気後退(リセッション)を招かず克服することが難しくなる恐れがある」と述べた。

足元30%の確率でインフレ率が1%から3%のレンジのいずれかになると予想されるなか、実際の動向次第でFRBも政策対応の修正を余儀なくされる可能性があるとした。ただ、段階的な利上げが引き続きFRBの基本シナリオであると確認した。

HSBC証券(ニューヨーク)の首席米エコノミスト、ケビン・ローガン氏は、イエレン氏の発言について、弱いインフレが一時的かどうか定かではないが、それでも金融政策は緩和的、との意味合いが含まれていたと分析。その上で「緩やかなアプローチなら、たとえインフレを巡って(FRBが)判断を誤ったとしても、大きな間違いにはならない。こうしたことを伝えようとしているのだろう」と話した。

短期金利先物が織り込む12月の利上げ確率は約76%。一方、来年の利上げ回数1回のみと予想されている。

イエレン議長は、見通しを判断する上で向こう数カ月間、物価および労働市場の指標を注視していくとする一方、「データにはノイズがあり、特効薬にはならない」との見通しを明らかにした。また利上げのタイミングは予想通りとはならない可能性もあるが、「道筋としては段階的となる公算だ」とした。

インフレの議論を巡って、世界経済や世界中の供給網などが国内物価を押し下げているという理論にはまだ、経験的な支援材料が無いとの考えを示した。

また高止まりするパートタイム労働者数など、労働市場の弱さを示す一部状況は循環要因でなく、労働力を巡る恒久的な変化を反映している可能性を指摘した。

*内容を追加、写真を差し替えて再送します。

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期

ビジネス

英インフレ、今後3年間で目標2%に向け推移=ラムス

ビジネス

米国株式市場=S&Pとナスダック下落、ネットフリッ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中