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焦点:中国の「ゾンビ企業」改革、担い手も国有企業か
9月24日、中国は今年、肥大化した同国国有企業の改革を加速させようとしている。北京にある中国人寿保険の本社で昨年3月撮影(2017年 ロイター/Jason Lee)
[香港 24日 ロイター] - 中国は今年、肥大化した同国国有企業の改革を加速させようとしている。銀行や投資家は、10月の中国共産党大会後に資産売却などが行われる可能性に期待を寄せている。
だが、中国政府が同改革に民間資本は不可欠だと奨励しているにもかかわらず、その役割は限られたものになる可能性が高いと、中国政府の計画に詳しい複数の関係筋は明かす。
彼らによれば、中国政府は、苦境にあえぐ国有企業のうち大規模なものの救済には、中国人寿保険<601628.SS>や中国中信のような資金力のある国有企業に頼る公算が大きい。
中国人寿が先月、中国聯合網絡通信(中国聯通、チャイナ・ユニコム)<0762.HK>による120億ドル(約1.3兆円)の増資の一部を引き受けたことを同関係筋は例として挙げた。
国有企業改革における民間資本の役割が限定的になれば、真に抜本的な改革といえるのか疑問が残ることになるだろう。野心的な経済成長目標を達成し、国有企業の債務を軽減するため、中国は同改革のスピードを早めたい考えだ。
「現行のモデルでは、勝者の好調な企業が、不調な企業を一部所有することになる」
こう指摘するのは、ナティクシスのアジア・太平洋地域担当のチーフエコノミスト、アリシア・ガルシア・ヘレロ氏だ。「言い換えれば、これは大方、国有企業のあいだで利益と損失の入れ替えを行っているようなものだ」
関係筋によると、中国人寿は、水力発電デベロッパー大手の傘下にある中国三峡新能源有限公司と交渉中だという。
民間資本を国有企業に注入するいわゆる「混合所有制」の候補に挙がっている企業にとっても、民間資本の役割は極めて重要だと、同関係筋は指摘する。そのような企業のなかには、中国南方電網や中国船舶工業集団、中国核建などが含まれている。
中国人寿と中国中信はコメント要請に回答しなかった。
国有企業は、金融から保険、エネルギー、通信に至るまで、中国の主要産業を支配している。資金調達が容易なこともあり、国内外における投資において、国有企業は民間のライバル企業を凌駕(りょうが)し続けている。
しかし国有企業の収益力は民間企業に及ばず、中国の銀行が抱える不良債権で最大の割合を占めているのは国有企業である。
国有通信会社のチャイナ・ユニコムの資金調達は、2015年の政府計画にアウトラインが示されていた混合所有制への期待を高めた。
ユニコムの増資には、アリババ・グループ・ホールディング
だが、中国政府が資本と支配をてんびんにかけるなか、中国人寿は結局、ユニコムの株式10.6%を取得。これは売りに出された株式全体の3分の1近くに相当する。中国人寿を含む新しい投資家には、15ある議決権のうち3つが与えられた。
「国有企業改革を成功させるには、こうした企業の所有権が、株式保有とガバナンスの両面において真に多様化されることが必要だ」と語るのは、北京に拠点を置き、中国の国家発展改革委員会(NDRC)や民間企業と仕事をする弁護士だ。
「だが、それを達成するのは困難だろう。国有企業のほとんどについて、民間企業には投資するインセンティブがないからだ」と、この弁護士は慎重さを要する問題であるため、匿名でこう語った。「したがって、基本的にはある国有企業のキャッシュを使って、別の国有企業をよみがえらせようとすることになるだろう」
NDRCと国務院国有資産監督管理委員会は、ロイターのコメント要請に応じなかった。
<資本調達への招待>
とはいえ、民間資本は依然として大きな役割を担うことが期待されている。
今年一段と減少が予想される外国直接投資を呼び込むため、中国は先月、海外投資家への規制をさらに緩和すると発表した。
そのなかには、銀行、保険、証券といった、これまで外国勢の資本参加規制があり、中国市場への進出を目指す海外企業が不満を抱いていた分野も含まれている。
来月の共産党大会を念頭に置く銀行関係者は、その後の国有企業改革の波が単なるタイアップ以上のものになることに期待を寄せる。(政府には)不要で割安に評価されているが、民間投資家には、所有権が得られるなら価値が出る小口資産の売却も含まれるかもしれないとみる向きもある。
共産党大会は「とても重要な転換点となる」と、モルガン・スタンレーの中国部門責任者ウェイ・スン・クリスチャンソン氏は今月ある会議で、国有企業の売却あるいは事業の分離独立の可能性についてこう述べた。
「そうした一切が投資家に好機を生み出す」と同氏は語った。
差し当たって、環境は中国人寿のような企業に有利となっている。
関係筋によると、次に中国人寿が出資する可能性が高い中国三峡新能源は、約15億ドルの増資を検討しているという。
他に中国三峡新能源の資本調達に名乗りを上げるのは、やはり国有企業の可能性があり、民間投資家からは熱い関心は見られないと、関係筋の1人は言う。
「混合所有改革の次のラウンドに積極的に参加する」と、中国人寿の 楊明生会長は先月、決算発表会見でこう述べた。
だが、一部の混合所有候補企業が民間資本を呼び寄せる魅力に欠ける一方で、中国が推進する改革の一端を担おうとする民間投資家のなかには、収益以上のものを考慮する者も出てくるだろう。
「中国では、金もうけだけを考えていてはやっていけない」と、ユニコムの増資に参加したある個人投資家は話す。
「国の政策への支持を示すため、そうした改革に参加する必要がある」
(Julie Zhu記者、Sumeet Chatterjee記者 翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)