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インタビュー:M&Aは欧州強化の優先順位高い=アサヒ社長

2017年09月21日(木)18時08分

 9月21日、アサヒグループホールディングスの小路明善社長は、ロイターのインタビューで、新たなM&A(企業の合併、買収)について、欧州事業の基盤をさらに強くする案件の優先順位が高いと述べた。写真は2016年5月、東京本社でインタビューに答える同社長(2017年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 21日 ロイター] - アサヒグループホールディングス 2502.Tの小路明善社長は21日、ロイターのインタビューで、新たなM&A(企業の合併、買収)について、欧州事業の基盤をさらに強くする案件の優先順位が高いと述べた。

計約1兆2000億円を投じて西欧事業、中東欧事業の買収を行ったが、財務的にみても、2020年には数千億円規模のM&Aが可能との見解を示した。

<ベトナムへの投資、将来プレミアム市場になるかも判断材料>

小路社長は「(既存のビジネスモデルを補完する)ボルトオン型で欧州の基盤をさらに強くすることの優先順位は比較的高い」と述べた。

2017年12月末でネット有利子負債/EBITDA倍率は4.8倍になる見通し。年間1000億円のフリーキャッシュフローとアセットの見直しで計4000億円とすれば、2020年にはネット有利子負債/EBITDA倍率は3倍に下がる。

小路社長は「3倍になれば通常の状況に近い。財務バランスを考えると、そういう時期には大きな投資が可能になる」と述べた。数千億円レベルの投資も可能かとの質問に対しては「可能だ。案件によるが、強い競争力の条件を備えている案件ならば、ディールの大小は別にして、投資していこうと思っている」と述べた。

政府保有株式の売却動向が注目されているベトナムのサイゴンビール・アルコール飲料総公社(サベコ)SAB.HMについては「研究はしているが、それ以上のことは言えない」とした。ベトナム市場は「成長市場で魅力がある」との認識を示しながらも「我々はプレミアム市場に足場を固めていきたいと考えており、そういう市場にベトナムが将来的になり得るかも判断の材料になる」と述べた。

M&Aと並行して、同社は、ノンコア事業や低採算で改善見込みのない事業、アンコントローラブルな事業について、継続するか、整理するかの見直しを行っている。約20%の株式を保有している中国・青島ビール600600.SS0168.HKについては「上場企業であり、株価にも影響するため、コメントできない」とした。ただ、青島ビールも含めたアセット見直しの青写真はすでに出来上がっており、交渉の段階に入っている。小路社長は「継続、整理についてのコメントを今年末までに出す予定にしている」と述べ、年内をめどに結論を得ていく考えを示した。

<欧州市場、将来的にはノンアルビールなども投入>

同社は、16年10月に西欧のビール事業、17年3月に中東欧のビール事業を買収、合計で約1兆2000億円を投じた。9月からはイタリアでスーパードライの製造を開始。来年1月からイタリア、英国でスーパードライ生ビールを販売する計画を明らかにした。小路社長は「生ビールは、プレミアムビールとして大きな差別化商品となる。スーパードライのブランド価値を上げることができる」と期待を寄せている。

さらに、欧州市場には、将来的に、ノンアルコールビールや、そのまま飲めるRTD(Ready To Drink)、機能性ビールも投入していきたいとした。ドイツでは総市場の5%、チェコでは3%のノンアルビールの市場があるという。

一方、国内の消費動向は「弱含みの状況は変わらない。節約一辺倒ではないが、メリハリ消費の傾向は強くなる」との見方を示した。そのなかで、ビール類(ビール、発泡酒、新ジャンル)についても「年平均1%マイナスの過去10年のトレンドから大きく変わらない」とみている。また、2019年10月に消費増税が実施されたとしても「仮需やその反動はあるが、大きく落ち込むことはない」との見方を示した。

こうした市場において「いかにビールのブランドを強くし、スーパードライと両輪をなすブランドを作って行くかがポイント」としたほか、税率一本化のなかでも新ジャンルは残るとみており、新ジャンルでも強いブランドを作って行く方針を示した。

*詳細な内容を追加しました。

(清水律子 浦中大我)

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