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ロイター/INSEADアジア企業景況指数、第3四半期は69に悪化

2017年09月20日(水)12時15分

 9月20日、トムソン・ロイターがINSEADと共同で実施したアジア企業景況調査によると、第3・四半期のアジア主要企業の景況感は69で、第2・四半期の74から悪化した。写真は上海で2011年9月撮影(2017年 ロイター/Carlos Barria)

[ムンバイ 20日 ロイター] - トムソン・ロイターがINSEADと共同で実施したアジア企業景況調査によると、第3・四半期のアジア主要企業の景況感<.TRIABS>は69で、第2・四半期の74から悪化した。同調査は86社の向こう6カ月の見通しを反映したもので、50が景況の改善と悪化の分岐点。

アジア域内の大半の国・地域で経済情勢が上向いたが、地政学リスクの高まりを受けて、全体の景況感は3四半期ぶりに悪化した。

国別では、地政学的緊張やさえない成長を背景に、中国、インド、韓国の景況感が悪化。東南アジアと豪州は改善もしくは横ばいだった。

INSEADのアントニオ・ファタス教授(経済学)は「企業は今四半期、アジア域内のみならず、世界の通商および外交的な緊張感に懸念を示していた」と指摘。「経済に打撃を与えかねない潜在的なリスクへの警戒感が、全体の景況感の悪化につながった」との見方を示した。

今回の調査で国別のサブ指数が最も大幅に低下したのは韓国で、指数は75から50に低下した。核実験やミサイル発射を強行する北朝鮮を巡る問題に加えて、米軍の新型迎撃ミサイルTHAAD(サード)の韓国配備に反発する中国との貿易摩擦が指数低下をもたらした。

中国の指数は63で、2015年第4・四半期以来の水準に低下した。第2・四半期の国内総生産(GDP)は前年比6.9%増だったが、債務を巡る規制強化を背景に成長率は今後鈍化が予想されている。

インドは82から63に低下し、2013年第2・四半期以来の低水準となった。第2・四半期GDPは前年比5.7%増で3年ぶりの低成長を記録。民間投資が低調で、今後もさえない成長が続く見通し。

オーストラリアのサブ指数は67から69に上昇、シンガポールは62から64に上昇した。インドネシアは17ポイント上昇して100と、2013年第2・四半期以来の高水準で、上昇幅も最大となった。

マレーシア、フィリピン、台湾は横ばいだった。

<景況感は今後、横ばい推移か>

世界の中央銀行が金融政策を引き締めるペースが、向こう数四半期のアジア企業の景況感を左右する最も大きな要因の一つとなりそうだ。

DBS(シンガポール)のチーフエコノミスト、ラドヒカ・ラオ氏は「アジア経済にとっては、地政学的な緊張感よりも、世界の中央銀行の政策正常化と原油価格の上昇が、より大きな材料だ」と指摘する。

カナダの中央銀行は既に、ここ数カ月間に2度の利上げを実施。イングランド銀行(英中銀)も利上げの可能性に言及している。現在、最も注目されているのは米連邦準備理事会(FRB)が20日に示す政策決定で、FRBは政策正常化に向けた措置に踏み出すとみられている。

しかし、アジア企業の景況感が大きく振れる可能性は低いのではないかと指摘する声もある。DBSのラオ氏は「アジアでハイテクが強い国や、コモディティー輸出が中心の国は好転するだろうが、原油価格が反転でもしない限り、現状の景況が今後も続くとみている」と語った。

今回の調査では、今後6カ月の見通しが明るいと回答した企業の割合は47%に低下し、2016年第4・四半期以来の低水準となった。一方、中立は45%で、2016年第1・四半期以来の高水準だった。

セクター別に見ると、小売り、金属、不動産、ハイテクが強気。自動車、建設、ヘルスケア、運輸などはより慎重な見方を示した。

調査に回答したマレーシアのコッサン・ラバー・インダストリーズなどは、先行きに関する主要なリスクとして為替と金利を挙げた。同社は、手袋の世界的な需要の拡大を背景に慎重ながらも楽観的な見方を維持したが「原材料やエネルギー、労働コストの上昇、不安定な為替相場を受けた製造コストの高まり」を心配していると回答した。

*調査対象企業は前回調査から変更されている可能性がある。

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