ニュース速報

ビジネス

焦点:FRB、資産縮小正式発表へ 市場の動揺回避に万全の手

2017年09月20日(水)17時06分

 9月18日、米連邦準備理事会(FRB)は19─20日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、資産縮小を正式に発表する見通しだ。写真はワシントンの連邦準備制度本部。5月撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)

[ニューヨーク/サンフランシスコ 18日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は19─20日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、資産縮小を正式に発表する見通しだ。4兆5000億ドルに上るバランスシートの大半は2007─09年の金融危機に対応して積み上がったもので、危機モードの政策解除がまた1つ進む形になる。

イエレン議長の思惑通りなら、資産縮小が発表され、恐らく10月から実施が始まるとしても、金融市場は過去の政策変更時のような動揺は見せないだろう。フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は、何年にもわたって計画を練り、何カ月も前からメッセージを発信してきただけに、実際の資産縮小プロセスは退屈なほどに淡々と進んでいくはずだとの見方をしている。

ロイターの100人近いエコノミストに対する調査に基づくと、今回のFOMCで政策金利は据え置かれる見込み。ただ市場は12月の利上げ確率を52%織り込んでおり、FRBが示す最新のFOMCメンバーの金利見通しが注目される。

FRBはイエレン議長の下でゼロ金利解除以降に4回利上げし、新規の資産買い入れを停止してきた。次の段階は、資産の売却こそしないものの、償還分の再投資をやめるということになる。

世界全体で経済が上向き、米国の金融環境がなお緩和的なため、こうした措置を実施しても、例えば2013年の「テーパー・タントラム」のように市場に衝撃を与えることは避けられる。

かつてFRBのエコノミストだったドイツ銀証券のチーフエコノミスト、ピーター・フーパー氏は「市場は米金融政策に関して起きている事態に非常に神経をとがらせるだろう。とはいえ、もはや金融危機からずっと目にされてきた異例の緩和はもはや必要がなく、資産縮小の時機が到来している」と指摘した。

資産縮小の推移は、欧州中央銀行(ECB)と日銀も注視することになる。それは欧州や日本の経済および金融市場にどう影響するかと、米国における今回の実験からどんな教訓が得られるかという2つの点からだ。

資産の縮小幅はまず1カ月当たり100億ドル以内とされ、1年間で四半期ごとにこの縮小幅が月500億ドルになるまで引き上げられる。アナリストの計算では、最初の1年の縮小規模は3000億ドル近く、2年目では5000億ドル近くになる。

まだ分からない最も重要な点は、FRBが残っている再投資資金をイールドカーブ全般に分散化させるのか、あるいは短期ゾーンに集中して資産縮小ペースを加速させるのかだ。これは長期債利回りの今後の上昇余地に影響してくるだろう。

もう1つの不確定要素は住宅ローン担保債の保有圧縮ペースで、これは住宅所有者の借り換え判断に左右される面がある。

(Jonathan Spicer、Ann Saphir記者)

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

記録的豪雨のUAEドバイ、道路冠水で大渋滞 フライ

ワールド

インド下院総選挙の投票開始 モディ首相が3期目入り

ビジネス

ソニーとアポロ、米パラマウント共同買収へ協議=関係

ワールド

トルコ、経済は正しい軌道上にあり金融政策は十分機能
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中