ニュース速報

ビジネス

医療費抑制へ官民連携、神戸市が国内初の「インパクト投資」始動

2017年07月20日(木)16時15分

 7月20日、神戸市と三井住友銀行、社会的投資推進財団は、医療費抑制に向けた官民連携の新たな取り組みを始めると発表した。個人投資家から集めた資金などを原資に行政サービスを行い、相応の効果が現れれば投資家に還元する「社会的インパクト投資」と呼ばれる手法で、国内初の案件となる。写真は茨城で2015年3月撮影(2017年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 20日 ロイター] - 神戸市と三井住友銀行、社会的投資推進財団は20日、医療費抑制に向けた官民連携の新たな取り組みを始めると発表した。個人投資家から集めた資金などを原資に行政サービスを行い、相応の効果が現れれば投資家に還元する「社会的インパクト投資」と呼ばれる手法で、国内初の案件となる。

今回の事業は、神戸市に住む糖尿病性腎症の患者100人を対象に、委託を受けた民間企業が食事療法などの保健指導を実施し、今後3年間の経過を観察する。事業費2426万円のうち、大半は財団や銀行が出資するが、残りは富裕層の個人投資家から資金を募る。

インパクト投資の中でも「ソーシャル・インパクト・ボンド」(SIB)という方法で、生活習慣の改善や重症化を予防できた場合、抑制できた医療費の一部を投資家への配当に充てる。効果が見られなければ配当は減り、最低保証額以上の行政負担は生じない。

糖尿病性腎症は、最も症状が重い「第5期」に入ると人工透析が必要になり、年間の医療費は約500万円と飛躍的に増える。透析が必要になる前の段階で食い止め、医療費の抑制や健康寿命の延伸につなげる狙いがある。

社会的投資推進財団の青柳光昌代表理事は、ロイターの取材に対し「医療費が約40兆円という中で、今回のような取り組みができると大きな財政的メリットが出る。公的コストの削減につながりやすい分野をさらに見定めていきたい」と述べた。

富裕層のマネーを取り込みつつ、社会的課題の解決を図るSIBは、欧米諸国が先行して取り入れている。財団によると、2016年7月時点での世界での実施事例は63件あるが、アジアでは韓国とインドで1件ずつと出遅れている。

(梅川崇)

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EVリビアンが約1%人員削減発表、需要低迷受け今

ビジネス

USスチール買収計画の審査、通常通り実施へ=米NE

ビジネス

企業の資金需要DIはプラス4、経済の安定推移などで

ビジネス

ネットフリックス、会員数公表停止へ 1─3月大幅増
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中