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短期的な需要喚起策は不要、保護主義を警戒=桜井日銀審議委員

2017年05月25日(木)11時59分

 5月25日、日銀の桜井真審議委員(写真)は、佐賀市内で講演し、日本経済の需要と供給の差を示す需給ギャップが改善傾向にある中で、「短期的な需要を無理に押し上げる政策は必要ない」と述べ、さらなる政策対応に慎重な姿勢を示した。写真は都内で昨年9月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

[佐賀市 25日 ロイター] - 日銀の桜井真審議委員は25日、佐賀市内で講演し、日本経済の需要と供給の差を示す需給ギャップが改善傾向にある中で、「短期的な需要を無理に押し上げる政策は必要ない」と述べ、さらなる政策対応に慎重な姿勢を示した。また、欧米を中心に強まりつつある保護主義的な動きに懸念を表明した。

桜井委員は、景気の改善が続く一方で、物価や賃金の伸びは「相対的に緩やか」とし、その背景には、家計や企業の将来の所得や収益に対する不安があると指摘。このため政策対応は短期的な需要喚起よりも、少子高齢化の下でも成長力を高める方策など長期的な課題の解決に地道に取り組む重要性を訴えた。

需給ギャップの改善が今後も見込まれる中で「さらに短期的な需要を無理に押し上げる政策は必要ない。むしろ、景気の振幅を増すことの弊害が大きい」と主張。「無理に短期的な需要を喚起して2%の物価上昇を実現しても、安定的に持続させることはできない」との見解を示した。

昨年9月に導入したイールドカーブ・コントロール(YCC)政策によって、金融政策運営は柔軟性と持続性が高まるとともに「政策の効果がより理解されやすくなった」と語った。

それまでのマネタリーベースを操作目標としていた政策は「市場関係者以外には馴染みが薄かった」とし、長期金利を操作対象とした現行政策の方が「緩和的な金融環境を強くアピールできる」と指摘。YCC政策は「これまでのところ、大きな問題なく長期金利を目標水準に維持できている」と評価した。

日銀は操作目標を「金利」に移した後も、長期国債の買い入れについて、年間約80兆円をめどに保有額を増加させる方針を示している。この点については「金利の操作に主眼が置かれている」ものの、「引き続き量・金利の両面で金融緩和を続けていくことに変わりはない」と語った。

また桜井委員は、米国の経済政策運営や欧州主要国の選挙などを巡る不透明感が一段と強まれば、「実体経済に影響が及ぶことは避けられない」とし、特に「保護主義的な動きには注意が必要」と強調。

今後、保護主義的な動きが強まることによって「貿易や直接投資を抑制し、既存のサプライチェーンの再構築を迫られることになると、世界経済は大きな混乱を来す」と懸念を示し、世界経済の持続成長には「貿易と直接投資の自由度が確保されることは必要条件」と語った。

(伊藤純夫)

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