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アングル:安倍首相、超長期政権視野に 越えられるか選挙のハードル

2017年03月02日(木)16時58分

 3月2日、自民党が総裁任期を延長することで、安倍晋三首相が史上最長の政権に挑むためのトラックが整う。写真は都内で2015年5月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 2日 ロイター] - 自民党が総裁任期を延長することで、安倍晋三首相が史上最長の政権に挑むためのトラックが整う。憲法改正など首相の悲願であるゴール到達までには選挙というハードルが控えており、スキャンダルや支持率の低い政策をどのようにこなしていくのか、今後のコース運営能力が問われる。

自民党は5日の党大会で、総裁の任期をこれまでの「連続2期6年まで」から「連続3期9年まで」に延長する。2018年9月に2期目が終了する安倍晋三首相が次の総裁選に勝利すれば、2021年までの超長期政権が可能となる。

世論調査での内閣支持率は、初の日米首脳会談後に60%近くと、安定的に高い数値を示している。

自民党の下村博文幹事長代行はロイターのインタビューで、日米首脳会談の成功により「世界は日本の、安倍首相のリーダーシップをますます求めるようになる」と評価する。そして「世界の期待が、結果的に国内の安定政治につながっていく」と見通す。

安倍首相の3期目挑戦についても、「年齢的に若いし、支持率も高い。健康に恵まれ、意欲もあるのだから、もっとやれるのであれば、できるだけ世の中の役に立つようなことをしたいのは、誰でも思うこと」と支持を示した。

超長期政権が実現した場合、安倍首相の悲願であり、自民党の党是でもある「憲法改正」が政策の大きなテーマとなってくることは間違いない。

政治評論家の有馬晴海氏は「憲法改正のように国の仕組みを変えるプランを実現するには、国民の理解を得るのに時間がかかる。3年4年では難しい。長期プランに取り組むためには、任期が長いことはいいこと」と指摘する。

<選挙で国民の判断、長期政権のおごりも>

一方、政権が長期に及ぶことによるおごりや堕落が、リスクファクターになってくるとの指摘も聞かれる。

安倍首相は今週の国会で、大阪市の学校法人「森友学園」が小学校建設用地として国有地を評価額より大幅に安く購入した問題で野党から連日追及を受けた。

安倍首相の妻・昭恵さんが、4月に開設予定の同小学校の名誉校長を務めていたが、この問題を受けて辞任した。

民進党は、今後もこの問題で安倍首相の責任を追及していく構え。首相は「私や妻は学校の認可や国有地の払い下げに一切関与していない。関与していたら総理大臣も国会議員も辞める」と述べているが、今後の成り行き次第では、さらに大きなスキャンダルに発展する可能性も否定できない。

さらに、安倍首相が取り組んでいる課題の中には、福島原発の処理問題や憲法改正、カジノ法案、など世論調査によると支持率が高いとは言えない政策も多く、18年9月の総裁任期終了前に予想される衆院解散総選挙、2019年の参議院選挙では、それらに対する評価が問われることになる。

安倍首相を身近で支える下村幹事長代行も決して楽観はしていない。「総裁任期が延長になっても、自動的に総理大臣として延長になるわけではなく、その間に選挙がある。負ければ総理の責任は問われる。(首相として再任しても)3年間やれるかどうかは、選挙を勝ち続けなければならない。それは難しい話だと思う」と話す。

有馬氏は、安倍首相が支持率の高さにあぐらをかいて、おごりが出てくることがリスクになると指摘する。「森友学園問題かもしれないし、他のことかもしれない。それらの合わせ技で、どこかで選挙に負けて、安倍政権が終わってしまうかもしれない」。

(宮崎亜巳 リンダ・シーグ 編集:田巻一彦)

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