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アングル:仮想通貨、ハッカー攻撃に対する脆弱性が浮き彫り

2016年08月31日(水)08時04分

 8月29日、香港に拠点を置く仮想通貨ビットコイン取引所最大手のビットフィネックスは今月初め、ハッカー攻撃を受けて約7000万ドルの盗難にあった。写真はビットコイン。パリで2015年5月撮影(2016年 ロイター/Benoit Tessier)

[ニューヨーク 29日 ロイター] - 香港に拠点を置く仮想通貨ビットコイン取引所最大手のビットフィネックスは今月初め、ハッカー攻撃を受けて約7000万ドルの盗難にあった。これは2014年に東京のマウントゴックスがおよそ3億5000万ドルのビットコインを盗まれて以来の被害規模だった。

ビットコインの世界ではこうした盗難は決してめずらしくはない。ロイターが入手したデータによると、過去6年間ではビットコイン取引所の約3分の1がハッカーによる被害を受けたことが分かった。

またビットコイン所有者にとっては、盗難などで損失を被った場合にそれを補てんしてくれる預金保険機構のような組織が存在しないことで、リスクは一層大きくなる。

つまり投資家はハッカー攻撃で被害を受けるリスクが浮き彫りになっているばかりか、資本バッファーが不十分なビットコイン取引所を相手にすることで、規制の枠内にある銀行や伝統的な取引所が対応してくれるような損失カバーが期待できないわけだ。

専門家によると、ビットコイン取引所へのハッカー攻撃は弱まる気配が見えない。

タンディ・スクール・オブ・コンピューターサイエンスのタイラー・ムーア助教授(サイバーセキュリティー)は「コンピューターのセキュリティーシステム侵入問題を解決する技術的な特効薬が出てくるかどうかは疑わしい。どんな技術、仮想通貨、金融メカニズムでもハッカー攻撃から安全となるようには設計できない」と述べた。

米国土安全保障省が資金を拠出する形でムーア氏が実施した調査のデータをロイターが入手したところでは、ビットコインが創設された2009年から15年3月までに営業していたビットコイン取引所のうち、33%がハッカー被害に見舞われている。

これに対して非営利団体プライバシー・ライツ・クリアリングハウスがまとめたデータでは、米国で事業展開する6000の銀行の中で、09─15年にシステム侵入によるデータ流出があったと公表したのはわずか67行と、全体の1%にすぎない。

もっとも証券取引所になると、システム侵入が起きた割合はずっと高くなる。証券監督者国際機構(IOSCO)と国際取引所連合(WFE)が3年前に発表した46の取引所に対する聞き取り調査では、半数強がハッカー攻撃を受けたと答えた。

(Gertrude Chavez-Dreyfuss記者)

ロイター
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