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インタビュー:日銀の外債購入も選択肢=浜田内閣官房参与

2016年08月30日(火)19時21分

 8月30日、内閣官房参与を務める浜田宏一・米イエール大名誉教授は、日銀による金融緩和強化にもかかわらず、円高が進行しているのは、アベノミクス失敗に賭ける投機的な動きとし、政府の市場介入が難しければ、日銀による外債購入も選択肢との見解を示した。写真は2014年12月撮影(2016年 ロイター/Issei Kato)

[東京 30日 ロイター] - 安倍晋三首相の経済ブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一・米イエール大名誉教授は30日、日銀による金融緩和強化にもかかわらず、外為市場で円高が進行しているのは、アベノミクス失敗に賭ける投機的な動きとし、政府の市場介入が難しければ、日銀による外債購入も選択肢との見解を示した。

ロイターとのインタビューで述べた。

日銀が1月にマイナス金利政策、7月に上場投資信託(ETF)の買い入れ倍増など追加緩和に踏み切ったものの、為替市場で円高圧力が継続している背景について「投機によって為替市場がゆがめられている」との認識を示した。

本来であればマイナス金利によって、低金利通貨を借りて高金利通貨に投資するキャリートレードで「ドル買いが起こるはずだが、起きなかった」と指摘。

さらに「ヘッジファンドと推察されるが、アベノミクスに正面から戦いを挑んでいると受け止める必要がある」と警告した。そのうえで「政府はどうすれば為替市場を正常化できるか考えるべき」と強調した。

具体的には「為替の過度な変動には、市場介入すべき」としたが、米国からの理解は得がたいとし「もう少し穏やかなかたちとして、日銀が外債を買うことも選択肢」と言及。市場で大規模な国債買い入れの限界も意識される中で「外債はいくらでもある。日銀も楽になる」との見方も示した。

日銀は9月の金融政策会合で、マイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)の「総括的な検証」を行うが、黒田東彦総裁の下での金融緩和政策は「アベノミクスの当初からうまくいっている」と評価。検証の結果として「金融緩和の縮小というのは論外だ」と述べた。

賛否両論あるマイナス金利政策については、金融機関の収益減少など「市場の神経を逆なでする面があることは否定しない」としたが、名目金利のゼロ%制約が「本質的な問題ではなくなった。マイナス金利は効く」と主張。マイナス金利と量的緩和の関係も「同じ方向を向いている」とし、必要な場合は「両方とも活用すればいい」と語った。

政府が大規模な経済対策を打ち出す中で、日銀は7月会合で追加緩和に踏み切ったが、消費再増税の先送りを含めて「財政も進める方向で舵を切ったのはいいこと。ヘリコプターマネーを1回だけ実現したと取れなくもない」との見方を示した。

ただ、変動相場制の下では「金融政策の方が経済に効く」とし、「日本をコンクリート漬けして、経済を活性化することには反対だ」と述べた。

(伊藤純夫 金子かおり 編集:田巻一彦)

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