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情報BOX:金融機関がドル/円予想を下方修正、年内90円前半も

2016年06月29日(水)18時57分

 6月29日、金融機関が相次いでドル/円予想を下方修正しており、英国のEU離脱決定による先行き不透明感の高まりを受けた円買いなどで、年内に90円台前半まで下落するとの見方も出てきた。各国の紙幣、北京で21日撮影(2016年 ロイター/Jason Lee/File Photo)

[東京 29日 ロイター] - 金融機関が相次いでドル/円予想を下方修正している。英国の欧州連合(EU)離脱決定による先行き不透明感の高まりを受けた円買いなどで、年内に90円台前半まで下落するとの見方も出てきた。

相場の基調反転には米経済が力強さを取り戻すことが必要とみられているが、米早期利上げ見通しが後退し、現時点での期待感は盛り上がりに欠けている。

三菱東京UFJ銀行・チーフアナリスト、内田稔氏は「10─12月期にドルの100円割れは定着していく」とみる。米景気そのものが少し変調をきたしてきているとして「インフレがよほど顕在化でもしない限り、年内の利上げはゼロということもあり得る」(内田氏)という。

英国民投票と米利上げが、6月までのドル/円市場での2大テーマだったが、英国民投票の結果は離脱派勝利となり、相場予想の前提自体が変わった。欧州通貨に対してドル高の動きが出ており、それが米国経済のファンダメンタルズに悪影響を与えるとの見方から、米利上げの思惑は大きく後退している。

米国の金融政策正常化をめぐっては、英投票での離脱派勝利で「とどめを刺された感がある」と、みずほ銀行・チーフマーケット・エコノミスト、唐鎌大輔氏は指摘する。「市場のテーマは、米国が次にいつ利上げするのかではなく、いつ利下げに動くのかに切り替わってくる」(唐鎌氏)という。

ドル/円の軟調地合いが反転する可能性については「仮に米雇用統計が強かったり、米景気が非常に強いといった、英国のEU離脱に関連した懸念を払拭するような動きが出てくれば、シナリオは変わり得る」と、三井住友銀行・ヘッド・オブ・リサーチ、山口曜一郎氏はみている。

一方、ユーロ/ドルは据え置き見通しが目立つ。英国の離脱派勝利のユーロ圏経済への悪影響への懸念から、ユーロ/ドルは売られやすい地合いとなっている。ただ、米利上げ観測の後退が下支えするとみられており、パリティ(1ユーロ=1ドル)を割り込むとの予想は少数派となっている。

主要金融機関の為替見通しは以下の通り。

ドル/円 ユーロ/ドル ポンド/ドル・円*1

バークレイズ 92 0.99 1.27

(9月末)*2 (100) (1.07) (1.50)

UBS*3 101-104-107 1.08-1.10-1.10 1.32-1.32-1.35

(3-6-12カ月) (105-105-110) (1.1-1.14-1.16) (1.46-1.52-1.56)

ゴールドマン・サックス 115-120-125 弱含み据置 1.32-1.34-1.35

(3-6-12カ月) (122-125-130) (1.12-1.10-1.05) (1.47-1.48-1.50)

JPモルガン・チェース 103-103 据置 1.29-1.30

(9月末-12月末) (106-103) (1.13-1.15) (1.51-1.52)

HSBC 95 1.1 1.2

(年末) (115) (1.2) (1.6)

メリルリンチ日本証券 105 1.05 1.30

(年末) (110) (1.08) (1.59)

三菱東京UFJ銀行 *4 95-107 1.04-1.16 1.25-1.43

(年内) (103-113) (1.04-1.18) (1.42-1.56)

みずほ銀行 *4 95-103 1.05-1.14 -

(年内) (105-120) (1.09-1.18)

三井住友銀行 *4 95-105 弱含み据置 1.2-1.35

(年内) (105-115) (1.07-1.15) (1.5)*2

野村証券 104 据置 - *5

(年末) (122) (1.05) (183)

大和証券 100-110 据置 135-160

(年内) (110-120) (1.08-1.15) (150-165)

*1 野村証券と大和証券はポンド/円。*2 カッコ内は英残留ケースの予想。*3 UBSはUBSウェルス・マネジメントの予想。*4

三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行(市場営業統括部調査グループ)は暫定値。*5 改訂作業中。

ロイター
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