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焦点:米ストレステスト、英EU離脱騒動で真価発揮か
6月27日、2008年の金融危機を受け米国の規制当局が始めた金融機関に対する健全性審査(ストレステスト)。写真は米連邦準備理事会(FRB)の画像の前を通り過ぎる警備員。3月にワシントンで撮影(2016年 ロイター/Kevin Lamarque)
[ニューヨーク 27日 ロイター] - 2008年の金融危機を受け米国の規制当局が始めた金融機関に対する健全性審査(ストレステスト)。欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国民投票を受けた混乱の中、その真価を証明することになるかもしれない。
予知できない危機や経済の急激な低迷、株式市場の急落、顧客の倒産危機に対して、どのぐらい銀行が体力があるのかに着目したのがこのテストだ。米連邦準備理事会(FRB)が先週結果を公表した金融規制改革法に基づく「DFAST」と呼ばれる第1弾では、FRBは株式市場が半分に落ち込み、失業率が10%に悪化したと想定。29日に明らかにする「包括的資本分析およびレビュー(CCAR)」と呼ばれる第2弾では、個々の銀行のビジネスモデルに合わせた厳しい想定を用意し、計画策定の過程についても評価を行う。
投資家はブレグジット(英国のEU離脱)によって銀行が打撃を受けると懸念しているが、アナリストはストレステストの結果は安心できるものになるはずだと分析している。CLSA銀行のアナリスト、マイク・メイヨ氏は「ストレステストは現実世界のもので、こういう時期だからこそ銀行の体力が分かり、米国の銀行が比較的強いことを示すだろう」と話す。
FRBのテストの想定基準が英国のEU離脱によって銀行が直面しているものよりもずっと厳しいものであるということで、投資家はある程度ほっとするかもしれない。
またメイヨ氏によると、FRBは大手行に増配も認める可能性がある。
一方、米ゴールドマン・サックスも27日、投資家の懸念に応じてブレグジットが来年の米金融セクターの利益に及ぼす影響を記したリポートを発表した。
ゴールドマンが想定したのは、企業合併・買収(M&A)活動が極端に縮小し、大手行にとって資本市場部門の収入が20%減少するとともに、FRBは少なくとも来年末まで利上げしないというシナリオだ。この場合でも金融セクター全体の1株利益が13%落ち込むというリスクにとどまるという。
<リーマン級ではない>
こうした折、米大統領選で共和党候補指名を確実にしている実業家ドナルド・トランプ氏や一部の議員は、ストレステストなどの法的根拠となっている金融規制改革を撤廃しようとしている。だが、金融改革のおかげで米大手行は英国の離脱決定がもたらしたショックのような危機にうまく対応できている。
カナダロイヤル銀行のアナリストチームは英国の離脱手続きについて「延々と続き、何度か微妙な転機があるだろう」とみている。ただ、大手行は既に、英国に拠点を置けば欧州大陸で自由に営業ができる「金融パスポート」は無効になると覚悟し、各行の幹部はそうした事態に備えて従業員や営業拠点をフランクフルト、ダブリン、アムステルダムといった場所に移すことを検討している。
さらにブレグジット問題に絡み、超低金利と世界的な融資低迷が長引く事態もほぼ確実視されている。
こうした状況下でも、アナリストたちは投資家に平静を保つよう呼びかけ、割安になれば銀行株を買うことも勧めている。ゴールドマンの市場アナリストは「ブレグジットが2008年のリーマン・ショックと同じか聞かれることがあるが、そうは思わない」と話した。
(Lauren Tara LaCapra記者)