ニュース速報

ビジネス

ロイター企業調査:8割が「デフレ逆戻り」懸念、増税や円高で

2016年05月27日(金)12時26分

 5月27日、同月のロイター企業調査によると、約8割の企業が来年までにデフレに逆戻りする懸念があると回答、デフレ脱却への期待がここへきて大幅に後退している。写真は都内の日銀本店前で3月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 27日 ロイター] - 5月のロイター企業調査によると、約8割の企業が来年までにデフレに逆戻りする懸念があると回答、デフレ脱却への期待がここへきて大幅に後退している。

熊本地震で収益の悪化を見込む企業が自動車では7割にのぼり、年金債務負担や運用悪化などマイナス金利による負担増も目立ってきた。ドル円相場は110円程度での安定を望む声が6割となった。

この調査はロイター短観と同じ期間・対象企業で実施。資本金10億円以上の中堅・大企業400社を対象に5月9日─23日に実施。調査対象企業は400社で、うち回答社数は240社程度。

<デフレ逆戻り懸念 円高と消費増税で景気悪化>

今年1月のロイター企業調査では今年後半までにはデフレを脱却しているとの見方が52%に達していた。しかし、今月はその割合が30%に低下。「当面脱却はできない」との回答が48%から70%に増えた。来年の消費増税に伴う消費低迷への懸念や円高の悪影響、構造改革の遅れなどが背景にありそうだ。

企業からは「円高傾向が強まっている」(食品)として、輸入物価の下落や景気減速への懸念を挙げる声も多い。消費の悪化を挙げる企業も多く「ベースアップが伸びないため個人消費も伸びず、メーカーも値上げが難しい状況になっている」(化学)、「節約志向が強まっている」(小売)など、消費者のデフレマインドが再び強まっているとの指摘がある。このため企業は製品・サービスの値上げを躊躇している。今年値上げを予定している企業は19%にとどまり、15年2月調査の32%から大幅に減った。

また社会保障や成長戦略などで改革の遅れを指摘する声もある。「将来への不安が残り消費が活発にならない」(輸送機械)、「短期的な金融・財政政策に頼っており、希望を抱かせる改革が見えない」(その他製造)など。安倍政権が策定した今年の成長戦略や一億総活躍プランが成長力を改善するとの回答は34%にとどまり、改善は難しいとの見方が66%にのぼった。人口減少という構造問題への具体的な取り組みは不十分と見られている。

<110円程度の円高環境、半数超が好感>

1ドル110円程度で推移しているこのところの為替水準について、事業環境として好ましいとの回答が60%を占めた。

製造業では55%が「この程度で良い」としており、「より円安が望ましい」の38%を上回っている。

「絶対レベルの影響は少ないが、変動が小幅であることが経営の安定につながる」(機械)として、落ち着きを見せている現状の為替レートで安定することを望む声が多い。

より円安を望む企業からは「115円で社内レートを設定している」(複数の企業)といった指摘もあるが、「110円程度であれば日本の景気は悪い方には向かわないだろう」(精密機器)といった見方がある。

マイナス金利に伴う企業負担に関して聞いたところ、「負担が大きくなる懸念」を持っている企業が57%と半数を超えた。ほとんどが「退職引当金の増加」(鉄鋼)、「運用が難しくなる」(電機)といった内容。「1割程度の負担増になる」(化学)との回答もあった。

対策としては、「退職給付債務の再評価を進める」(不動産)との声のほか、「確定拠出型方式への変更を検討している」(機械)ところも目立つ。「資産ポートフォリオの見直し」(卸売)や「社員の投資教育」(不動産)に力を入れるところもあるが、「対策のとりようがない」(輸送機械、小売)との指摘もある。

<熊本地震で収益悪化 輸送用機器は7割>

熊本地震で生産・販売体制に影響を受けた企業は全体の3割にのぼった。中でも電機では4割、輸送用機器は8割が影響を受けたほか、サービスや卸売も4─5割となった。

今期の収益に影響が出るとみる企業は全体の4分の1を占める。輸送用機器が7割と突出しており、鉄鋼、卸売・小売、サービスで3割程度の企業が影響を受ける見通し。

(中川泉 ホワイト・スタンレー 編集:石田仁志)

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

円安は是正必要な水準、介入でトレンド変わるかは疑問

ビジネス

米アップル、ベトナム部品業者への支出拡大に意欲=国

ビジネス

ECBの6月利下げ、インフレ面で後退ないことが前提

ワールド

米国連大使が板門店訪問、北朝鮮擁護やめるよう中ロに
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 5

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 6

    キャサリン妃は最高のお手本...すでに「完璧なカーテ…

  • 7

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 8

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 9

    中国の「過剰生産」よりも「貯蓄志向」のほうが問題.…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 4

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 5

    ドイツ空軍ユーロファイター、緊迫のバルト海でロシ…

  • 6

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 7

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 8

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 9

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 10

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中