ニュース速報

ビジネス

インタビュー:追加緩和、副作用のリスクも=諮問会議・高橋氏

2015年06月30日(火)16時46分

 6月30日、経済財政諮問会議の高橋進議員(日本総合研究所理事長)は、ロイターのインタビューで、追加緩和をしても今までのような効果が出てくるか分からないとし、むしろデメリットが出るかもしれないとの認識を示した。都内の日銀本店で24日撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 30日 ロイター] - 経済財政諮問会議の高橋進議員(日本総合研究所理事長)は30日、ロイターのインタビューで、追加緩和をしても今までのような効果が出てくるか分からないとし、むしろデメリットが出るかもしれないとの認識を示した。

最大のデメリットとして円安を通じた影響を挙げた。高橋氏は「円安になればなるほど、輸入価格を通じたコストアップや海外への富の流出が起きる。特に輸出に関連していない内需セクターは、コストアップの影響が非常に大きくなる」と見通し、「今は輸出セクターから国内セクターへ比較的好循環が波及しているのでまだ助かっているが、今後原油価格がさらに上がっていけば、円安のマイナス面が一気に表面化する恐れはある」と警戒した。

そのうえで、今は日銀の量的・質的金融緩和(QQE)で金利が低く抑えられているが、「物価が正常化しデフレ脱却すると、金利オーナスになる。オーナスとまでいかなくても、少なくとも金利正常化すれば、金利負担が徐々に上がることは間違いない」との見方を示した。

今後の財政健全化の取り組みでは「債務残高GDP(国内総生産)比が、これだけの赤字が続いていてもあまり増えずに済んでいるのは、まさに金利ボーナスのおかげ。債務残高GDP比をいかに安定的に下げていくか、という観点でさらに財政改革に取り組む必要があるのは間違いない」と指摘。

日銀の金融緩和で「財政に対する慢心が進むことが一番懸念される」とも語り、政府の取り組みは「そこを重々承知のうえでやっている」と語った。

債務問題で揺れるギリシャと財政健全化を迫られる日本との違いについて、高橋氏は「債務残高GDP比で見ると日本の方が悪いが、日本はその国債のほとんどを国内(資金)でまかなっている。ギリシャは相当部分を海外資金でまかなっていた。ここが抜本的に違う」と債務構造の違いを指摘。

そのうえで、「そうは言っても、日本の債務残高が大きいことは間違いない。かつ今は金融緩和をしている。今、金融緩和で金利が低く、ボーナス部分を受け取っているに等しい。まだ日本の国力が強く、純資産国でかつ金利も低い。今のうちに財政健全化の目途をつけることが必要だ」と語った。

(吉川裕子 木原麗花:編集 橋本俊樹)

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、ウクライナの兵器基地への攻撃を強化へ=国防

ワールド

中国の国防費拡大を懸念、台湾への挑発増す=米太平洋

ビジネス

英利下げはまだ先、インフレ巡る悪材料なくても=ピル

ビジネス

ダイハツ社長、開発の早期再開目指す意向 再発防止前
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中