ニュース速報

ビジネス

アングル:金融庁が銀行規制緩和へ、持ち株会社優先 地銀に焦り  

2015年05月21日(木)20時07分

 5月21日、地銀が新規ビジネス参入に乗り遅れる懸念が出ている。金融庁が銀行業にかかっている規制を緩和する際に、その対象を持ち株会社方式を採用している銀行に限定する可能性があるためだ。昨年8月撮影(2014年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 21日 ロイター] - 地銀が新規ビジネス参入に乗り遅れる懸念が出ている。金融庁が銀行業にかかっている規制を緩和する際に、その対象を持ち株会社方式を採用している銀行に限定し、採用していない銀行を対象外にする可能性があるためだ。地銀の多くは持ち株会社制を採らず、銀行単体でビジネス展開しており、焦りの色をにじませる地銀幹部もいる。

「検討範囲について、質問させてほしい」――。19日に金融庁で開かれた有識者による「金融グループをめぐる制度のあり方に関するワーキング・グループ」の初会合。北洋銀行<8524.T>の藤井文世常務取締役が、議論の対象について、銀行持ち株会社に限定されるのかどうかを金融庁側に問いかけるひと幕があった。

今回の作業部会では、1)IT技術の進展などを背景として銀行持ち株会社傘下の子会社の業務範囲をどこまで拡大すべきか、2)銀行持ち株会社のガバナンスのあり方はどうあるべきか―の2点を主に検討することになっている。議論を進めた上で、早ければ2016年の通常国会で銀行法を改正する。

業務範囲を広げることができれば、銀行はスマートホンでの決済やネット商店街など、今まで認められなかった業務ができるようになるのがポイントだ。

業務範囲を広げるにあたっては、どのようなガバナンス形態であれば、新規業務のリスクを銀行業務に波及させずに済むのかが焦点となる。

金融庁では、持ち株会社の傘下に銀行と新規業務を営む子会社が並列でぶら下がる方が、銀行本体にそのまま子会社をぶら下げるよりも、リスクをよりしゃ断できるとの判断を固めている。

しかし、持ち株会社形態を採用する地銀は少ない。「持ち株会社制を採る金融機関だけが新たなビジネスを展開できるようになれば、地銀の事業環境はいっそう厳しくなる」と、ある地銀幹部は危機感を募らせる。

地方銀行協会の寺門一義会長(常陽銀行<8333.T>頭取)は20日の会見で「今次の新しい動きが金融持ち株会社形態のみで展開されることになると、単独で経営している金融機関は取り残される懸念がある」と述べ、金融庁に単体経営の銀行への配慮を求める方針を示した。

こうした規制緩和の動きは、持ち株会社ではない地銀に対して、再編圧力にもなりえる。横浜銀行<8332.T>と東日本銀行<8536.T>、肥後銀行<8394.T>と鹿児島銀行<8390.T>、東京TYフィナンシャルグループ<7173.T>――。最近、統合に踏み切った地銀はいずれも持ち株会社を作っているからだ。

ただ、金融庁も、銀行持ち株会社を議論の中心に据えながら、銀行法制の改正にあたっては、単体経営への銀行についても配慮する方針も示す。

作業部会の岩原紳作座長(早稲田大学大学院法務研究科教授)は「銀行持ち株会社では(子会社の業務範囲を)かなり広く認めるとなると、なぜ銀行単体の子会社については認められないのか、という説明が必要になってくる」と述べている。

作業部会は月2回のペースで議論を進める予定。来週26日にはメガバンク3行から聞き取りを行うことにしている。

(和田崇彦 編集:田巻一彦)

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中