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アングル:欧州関連株に不透明感、マツダが示す対ユーロの円高リスク
4月27日、今週から本格化する2015年3月期決算発表では、先行きに不透明感が漂っている欧州関連銘柄の動向が注目されている。その中心的な要因はユーロ安/円高リスクだ。写真はユーロ紙幣、2014年3月撮影(2015年 ロイター/Tobias Schwarz)
[東京 27日 ロイター] - 今週から本格化する2015年3月期決算発表では、先行きに不透明感が漂っている欧州関連銘柄の動向が注目されている。その中心的な要因はユーロ安/円高リスクだ。
米国の利上げ観測後退やギリシャ問題の楽観論の広がりなどで一服感が出ているものの、中期的にユーロ安が進行するとの見方も根強く、そのケースでは、対ユーロでの円高で収益に打撃を受ける企業が出てきそうだ。
<決算発表後、下落したマツダの株価>
欧州関連株として意識されやすいマツダ<7261.T>。27日前場で同社の株価は、前週末比3%安となった。24日発表された15年3月期連結業績は営業利益が過去最高を更新する好決算となったものの、16年3月期見通しが市場予想を下回り、朝方から売りが先行している。
マツダが警戒するのは、ユーロ安だ。16年3月期は販売拡大や車種構成の改善が400億円利益を押し上げる一方、ユーロや新興国通貨の為替変動が340億円の減益要因となり、増益は小幅にとどまりそうだという。
想定為替レートは1ユーロ=130円と現行水準に近く、ユーロ高/円安となれば増益要因となるものの、逆にユーロ安/円高が進めば減益要因となる。同社の場合、為替が1円動いた際の営業利益に与える影響は、対ドルが13億円であるのに対し、対ユーロは18億円となっており、対ユーロの影響の方が大きい。
<株式市場で売り材料視>
今年1─3月、TOPIX500<.TOPX500>構成銘柄のうち、パフォーマンスが最も悪かったのはマツダだった。嫌気材料は、対ユーロで最大18円以上進んだ円高。グローバル販売に占める欧州の割合が15%以上と比較的高いため、影響が懸念された。
国内証券の自動車担当アナリストは「マツダは日本やメキシコから欧州に輸出しており、欧州での販売額が大きい。急激なユーロ安進行は想定しておらず、業績悪化懸念から売られた」と指摘する。
マツダは為替抵抗力の高い生産体制を構築するため、14年1月にメキシコ新工場を稼働させた。小飼雅道社長は決算説明会で、為替への耐性はある程度ついたとの認識を示したが、同社の関係者によると、ユーロ安に関してメキシコ工場は「有力なヘッジになっていない」のが実情のようだ。
<ドル/円に比べて小さい影響>
もっとも、14年の日本の輸出額73兆1052億円に占める対欧州連合(EU)の割合は、10.3%(7兆5853億円)にとどまる。
日本経済全体でみても、対ユーロでの影響は対ドルに比べてそれほど大きくない。大和証券の200社ベースの試算によると、15年度は1円の変動に対し経常利益ベースで、対ドルでは1570億円、対ユーロでは410億円の影響が出るという。
大和証券・投資戦略部の佐藤智穂氏は「ユーロ安/円高は業績へのマイナス影響があるものの、ドルの影響度はユーロに対して約4倍近くある。日本企業は円安メリットを大きく享受できる環境で、1ドル=120円程度の円安が続くならば、日本企業の業績は拡大すると予想できる」と指摘する。
<アジア市場での競争力低下に懸念も>
3月の米雇用統計が市場予想を大幅に下回ったことを受け、米国の早期利上げ観測が後退。懸念材料だったギリシャについてもデフォルトに陥るリスクやユーロ圏を離脱するリスクがくすぶりつつ、目先はやや楽観論が広がっている。
ただ、外為市場では、米国の利上げ時期が本格的に見えてくれば、米欧の金融政策の方向性の違いなどから再びユーロ安の方向に向かうとの見方も根強い。
ユーロ安で問題となりそうなのは、為替による利益の目減りだけではない。ユーロ安で競争力をつけた欧州企業が、中国を含むアジア市場などで価格競争力をつければ、日本企業を不利にする、との指摘もある。
第一生命経済研究所・経済調査部の首席エコノミスト、熊野英生氏は「ユーロ安が進むほど、日本は今まで享受していた円安メリットを徐々に後退させていく可能性がある」と話している。
(杉山健太郎 編集:伊賀大記)