全部がプーチンのせいではない、2023年の世界を待つ「5つの危機」とは?
ウクライナ戦争は2月で開戦1年になる(1月5日、ザポリッジャ) REUTERS
<ウクライナ戦争、世界経済、エネルギー供給、食糧供給、地球温暖化......。ウクライナ戦争をきっかけに世界の流れは大きく変わったが、すべてがプーチンが直接的な原因ではない理由について>
2023年の世界を脅かす5つの危機のうち4つは、直接もしくは間接的に、ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻を開始した昨年2月24日の朝にさかのぼる。
プーチンの戦争が原因で、世界の政治システムは第2次大戦以降で最大の危機に直面し、世界経済は激しいインフレに苦しんでいる。そして、エネルギー市場では空前の大激変が起きていて、食料市場は深刻な供給不足に見舞われている。
もう1つの危機だけがプーチンと直接関係がない。今年、世界を悩ます5つの危機を見ていこう。
■ウクライナ戦争
ウクライナ戦争は今年も世界の安定を揺るがし、核兵器使用のリスクを高め、各国の経済をかき乱すだろう。
アメリカなどの武器支援によりウクライナ軍の能力と士気は高い水準を維持すると思われるが、ロシアもまだ(途方もない数の兵士を失いつつも)ウクライナに甚大な打撃を及ぼせる軍事力を擁している。
今後の焦点はウクライナ、ウクライナを支援する国々、ロシアが戦闘継続に向けて国内の結束を維持できるかどうかだ。
■世界経済の苦境
これはプーチンだけが原因ではない。ウクライナ戦争以前に、新型コロナのパンデミックにより、世界経済は既に大きなダメージを被っていた。
コロナ禍の3年間、世界の国々が国境を閉ざし、社会・経済活動を制限した結果、世界規模で深刻な供給不足が発生。その後、コロナ対策が緩和されて需要が急増すると、需給ギャップが拡大した。それに加えて戦争を機にエネルギーと食料の価格が高騰し、インフレ率は過去40年で最も高い水準に達している。
欧米の中央銀行は、インフレ対策で金利を引き上げ始めた。一方、新興国の経済は欧米の利上げの影響とサプライチェーンの混乱で打撃を受けている。今年は世界規模の景気後退が始まる可能性もある。
■エネルギー供給の逼迫
プーチンが始めた戦争は、世界のエネルギー市場に混乱と激変をもたらしている。ヨーロッパ諸国は、対ロシア制裁の一環としてロシア産の石油・天然ガスの輸入を減らし、アメリカ産の液化天然ガス(LNG)に切り替える計画に乗り出した。30年までにエネルギー生産の45%を再生可能エネルギーに転換することも目指している。
今年は、ヨーロッパ以外の国々も、ウクライナ戦争によるエネルギー市場の混乱への対応を迫られそうだ。
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