コラム

参政党とは何か?「オーガニック信仰」が生んだ異形の右派政党

2022年07月14日(木)11時35分
参院選2022の選挙ポスター掲示板

参政党は今回の選挙で「政党」に昇格。写真左下は東京選挙区に立候補した同党の河西泉緒氏(6月22日、東京) Issei Kato-REUTERS

<「自尊史観」を唱え「天皇中心の国」を掲げながら、保守論壇からもネット保守からも支持らしい支持は受けていない。では誰が支持しているのか。答えは、もう一方の重点政策「食と健康、環境保全」にある>

政治団体「参政党」が今回の参院選挙全国比例で1議席(神谷宗幣氏)を獲得した(今回選挙で"政党"に昇格)。当初泡沫と思われた参政党はなぜ議席を獲得したのか。実は、当選した同党事務局長の神谷宗幣氏と私は約10年前に出会った。彼と一緒に少なくない期間、仕事をした経験もある。神谷氏とはいったいどのような人物なのだろうか。彼の思想から参政党は如何にして生まれたのか。令和の政界に突如として現れた参政党の実態に迫る──。

参政党は2020年4月に政治団体として結成された。結党当初の5人のボードメンバーのうち、神谷氏を除く3人が現在に至るまで意見対立により同党を離れるなど、短期間で主要幹部が大きく入れ替わっている。その原因の多くは、2020年末~2021年初頭に保守界隈で沸き起こった「バイデン候補陣営の不正選挙」を信じるか、信じないか(いわゆる勝ち組・負け組論争)という保守界隈の内部抗争だった。結果的にこの時「トランプ前大統領の勝利を信じ、バイデン候補の不正選挙を糾弾する」とした側が参政党に残る形になった。参政党が「日本版Qアノン」などと揶揄される所以はここである。

「天皇を中心とした国家」謳う

さて、同党綱領には「先人の叡智を活かし、天皇を中心に一つにまとまる平和な国をつくる」「日本国の自立と繁栄を追求し、人類の発展に寄与する」「日本の精神と伝統を活かし、調和社会のモデルをつくる」とある。のっけから「天皇を中心とした国家」を謳い、強い保守色がある。

また同党は、三つの重点政策として、1)「子供の教育」、2)「食と健康、環境保全」、3)「国のまもり」を掲げる。

1)の「子供の教育」については、"学力(テストの点数)より学習力(自ら考え自ら学ぶ力)の高い日本人の育成"を謳い、「国や地域、伝統を大切に思える自尊史観の教育」を掲げ、自尊史観(造語)の対義語としていわゆる「(リベラルによる)自虐史観」を想定していると思われ、保守色が強い。

3)「国のまもり」では特に"日本の舵取りに外国勢力が関与できない体制づくり"と謳って「外国資本による企業買収や土地買収が困難になる法律の制定」「外国人労働者の増加を抑制し、外国人参政権を認めない」とあり更に保守色が濃い。

尤もこういった重点政策は、参政党特有のものではなく近年にあって、新興の保守政党に特有のもので目新しさはない。過去にも『太陽の党』『次世代の党』が類似かそれに近しい政策を訴えていた。では参政党とこれらの決定的な違いは何かというと、保守論壇中央からの強力な支持があるか無いかの一点である。

参政党は保守層からの支持を得たのか?

furuya20220712233801.jpg

筆者制作

2014年に概ね日本維新の会から分派し、『太陽の党』と合流した『次世代の党』は、同年の衆院議員選挙に臨んだ。比例ブロックでの合計得票は約144万5000票で今回の参政党の全国比例約176万8000票と大差ない(但し、衆院比例は地域ブロックなので当選者は無かった)。しかし次世代の党は、保守論壇中央と呼ばれる岩盤層(当時―正論、WiLL、VOICEなどの保守系論壇誌、日本文化チャンネル桜などのCS放送局など)からの熱烈な支持を受けた。石原慎太郎氏が最高顧問となったことも大きく、保守論壇中央が主導する形でネット保守を巻き込み一大運動を展開したが、小選挙区当選2議席のみと惨敗した。

参政党は次世代と似たような政策を訴えているものの、保守論壇中央から支持らしい支持を受けていない。参政党の「看板」として精力的に街頭演説等を行い、ネットに極めて多く露出した以下の五名(参政党は彼らを"ボードメンバー"と呼んでいる)は、一部を除き保守論壇中央からかなり遠い位置にいるからだ。五名とは、事務局長の神谷宗幣氏、それに川裕一郎氏、松田学氏、赤尾由美氏、吉野敏明氏。但し、同党のタウンミーティング等のチラシやサイトには、川氏の代わりに武田邦彦氏が入ることが多く、事実上党の看板は神谷氏、松田氏、赤尾氏、武田氏、吉野氏の五名である。

神谷氏については後述するが、この中で最も保守論壇の中で知名度があるのは武田邦彦氏であることは間違いない。武田氏はネット保守層から熱狂的な支持を誇るDHCテレビの『真相深入り!虎ノ門ニュース』のレギュラーを2015年から勤め、著書のファンも多かったが、2021年12月に参政党から参院選に出馬することを理由に同番組を降板した経緯がある。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ワールド

米韓、北朝鮮巡る「拡大抑止」強化でコミット=韓国外

ビジネス

米金利先物、金利5%超え予想 雇用統計後 利下げ予

ビジネス

G7と豪、ロシア産石油製品で価格上限 ディーゼルに

ビジネス

NY外為市場=ドル急伸、好調な米雇用統計受け

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:日本のヤバい未来 2050

2023年2月 7日号(1/31発売)

ジャーナリズム・アカデミズム・SFで読み解く人口減少ニッポンの実像(カバーイラスト:東京幻想)

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    パリコレで58歳大御所モデル転倒の瞬間...ヒール捨て裸足で会場を圧倒

  • 2

    【解説】2月2日に最接近し「肉眼で見える」──二度と戻って来ない「緑のZTF彗星」の正体

  • 3

    「唇どうしたの !? 」クロエ・カーダシアン、ファンに衝撃走る

  • 4

    緑のZTF彗星がまもなく地球に最接近(2月2日)どうや…

  • 5

    「プーチンは戦争から手を引いた」──元ロシア軍情報…

  • 6

    ロシアで「国を滅ぼすような内戦」が起きる可能性...…

  • 7

    本当にただの父娘関係? 24歳モデルと父親の写真、距…

  • 8

    ロシア軍のあまりの無能さは「驚き」であり「謎」...…

  • 9

    プーチン邸に防空システム配備、と報道。西側の長距…

  • 10

    建設現場に若手が足りない......未来の日本では道路…

  • 1

    パリコレで58歳大御所モデル転倒の瞬間...ヒール捨て裸足で会場を圧倒

  • 2

    ビリー・アイリッシュ、二度見されそうな「R指定Tシャツ」で街を闊歩

  • 3

    【解説】2月2日に最接近し「肉眼で見える」──二度と戻って来ない「緑のZTF彗星」の正体

  • 4

    「唇どうしたの !? 」クロエ・カーダシアン、ファン…

  • 5

    ベラ・ハディッド、「貝殻ビキニ」でビーチの視線を…

  • 6

    本当にただの父娘関係? 24歳モデルと父親の写真、距…

  • 7

    緑のZTF彗星がまもなく地球に最接近(2月2日)どうや…

  • 8

    ロシアが誇る最新鋭T-14戦車ついに戦場へ? だが現場…

  • 9

    英国の伝統を侮辱? メーガン「ふざけたお辞儀」に大…

  • 10

    メーガンの「おふざけ」とは大違い? ダイアナが見せ…

  • 1

    パリコレで58歳大御所モデル転倒の瞬間...ヒール捨て裸足で会場を圧倒

  • 2

    5万年に1度のチャンス、肉眼で見える緑の彗星が接近中

  • 3

    米人気モデル、ビーチで「ほとんどヒモ」な水着姿を披露して新年を祝う

  • 4

    ビリー・アイリッシュ、二度見されそうな「R指定Tシ…

  • 5

    飼い主が目を離した隙にハンバーガーを食べ、しらを…

  • 6

    本当にただの父娘関係? 24歳モデルと父親の写真、距…

  • 7

    ロシアはウクライナでなく日本攻撃を準備していた...…

  • 8

    「そんなに透けてていいの?」「裸同然?」、シース…

  • 9

    【解説】2月2日に最接近し「肉眼で見える」──二度と…

  • 10

    【閲覧注意】ネパール墜落事故、搭乗客のライブ配信…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集
日本再発見 シーズン2
World Voice
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
羽生結弦アマチュア時代全記録
CCCメディアハウス求人情報
お知らせ

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中