コラム

中国がタイムトラベル禁止令

2011年04月12日(火)17時15分

 中国政府は、このところテレビドラマで人気を集めるあるジャンルの取り締まりを始めた。中国に関するブログ「チャイナ・ハッシュ」の記事を見てみよう。


 タイムトラベル物のテレビドラマではたいてい、現代に生きる主人公が何らかの理由、何らかの手段で時空を旅し、古代の中国へたどり着く。そこで彼(または彼女)はさまざまなカルチャーショックを体験するが、少しずつ環境に慣れていき、ついにはその時代の誰かと恋に落ちる。

 中国の視聴者がこの手の話が好きなのは間違いない。政府当局の国家ラジオ映画テレビ総局はそれが気に入らないようで、タイムトラベルを扱うドラマの制作停止を命じた。

 停止の決定は4月1日のテレビドラマ監督委員会の会合で下されたが、なにもエイプリルフールの悪ふざけというわけではない。ドラマ制作に反対する当局にはもっともな理由がある。

「タイムトラベルはテレビや映画で人気のテーマになりつつある。だがその内容や、誇張された演技には問題がある。多くの物語はまったくの作り事で、目新しさばかりが強調されている。プロデューサーや脚本家は、真面目な歴史をふざけて扱っている。今後は決して奨励されるべきものではない」


 米ニューヨーカー誌のリチャード・ブロディは、検閲官が不満なのはドラマが描く中国の歴史観よりも、そこでほのめかされている現代中国の姿だと指摘している。


 中国のタイムトラベル・ドラマに共通するのは、逃避という概念だ。共産党に支配された現代の中国から、別の時代の中国に逃げ出す。そこは時代遅れで奇妙な慣習があるものの、愛と幸せを見つけられる場所。タイムトラベルは、制約の多い現代社会から自由になる夢の役割を果たす。バカげた独裁体制から逃れる願望を描いたものとも言える。


 米バラエティー誌によれば、古典のいくつかの名著を基にした作品や欧米スタイルの刑事ドラマも制作停止になったという。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2011年04月11日(月)11時45分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 12/04/2011. © 2011 by The Washington Post Company.

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国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

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